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後悔しない恋。

精神的にも肉体的にも愛され満たされていると、狙われているという危機感に鈍くなるのか。 それともこの人は元々そうなのか。 二人きりになってもさっきまでと変わらず作業を黙々と続ける遥さんの横顔を見つめた。 「仕事、どう?」 「えっ」 見つめていた、合うとは思っていなかった目と目が合い、思いの外動揺していた。 「続けられそう?眞人、接客向いてそうだけど」 褒められてるのか。 何でもいい。 話すきっかけが出来たんだから。 「そう、ですね……けど、俺どうも侑司さんには避けられてるっぽくて」 実際そうなのだから嘘はついてない。 同情でも何でもこの人の気が引けるなら何でも良い。 「あー、あいつ、人見知りじゃないんだけどな…」 「俺の気持ちに気付いてるからですかね」 「え?何の気持ち?」 たぶん、気付いてないのは遥さん、あなただけです。 「たぶん、好きです」 「うん、…………何が?」 「俺、たぶん遥さんが好きです」 カチカチと、それまで気にもならなかった時計の音が耳を塞ぎたくなるほどうるさい。 「俺?それ、先輩として好き、とかじゃなくて?」 きょとんとした顔で俺を見る。 手を伸ばせば触れられる。 伸ばした俺の手から逃げる前に遥さんの頬に指が触れた。 「そういう意味で好きなら……ごめん」 「自分でもよくわかってなくて。たぶん、なんで気にしないでください」 触れた指から逃げるように背けられた顔がくにゃと歪む。 息を吐き出すように噴き出した後、遥さんが俺の髪をくしゃりと撫でた。 眉を下げ、もう一度ごめんと謝ったこの人を、この時やっぱり好きだと改めて感じた。

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