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後悔しない恋。

「へ?また?」 「またとか言わないでくださいよ……」 今度こその「本気で好きです」という俺からの告白に、焦がれる人はぽかんと口を開けた。 「たぶん、じゃなかったし、あんなみっともない告白されたとか思い出にされたくないんで」 拗ねた口調になりながらも言う俺の顔の前にぬっと影が出来る。 遥さんが腕を伸ばし、俺の頭をよしよしと撫でた。 「ちゃんと受け取った」 にこりと微笑まれ、吊られて俺の頬も緩んだ。 「でも、ごめん。俺は……侑司だけだから」 「そんなの、俺の方がいいかもしれませんよ。知らないだけで」 少し下がった眉毛、伏せられた目に頬に出来る長い睫毛の影。 「知らなくていい。知りたいとも思わない。侑司以外」 あぁ……やっぱり。 勿体無いですね、と憎まれ口を叩いてやろうと思ったのに、今ここにいない侑司さんに想いを馳せる遥さんを見たら何も言えなかった。 揺らぐことのない強い確かな思いは、こんなにも人を綺麗に映すのか。 「俺は……これからも侑司だけ。他は何も望まない。だからごめん。気持ちには応えてやれない…」 気持ち良いくらいにきっぱり言ってくれた。 真剣に受け取り、ちゃんと、望むことも縋ることも意味がないと振ってくれた。 前を向け。 そう言われた気がした。 深く深く息を吐いた。 「俺にも現れるんですかね……遥さんにとっての侑司さんみたいなヤツが」 「は?当たり前だろ」 胸を張って言い切る遥さんを見て思わず噴き出した。 「ぶはっ」 「何だよ!何がおかしいんだよ!」 「い、いえっ、なんか、悩んで色々考えてた自分がおかしくて」 中々笑いの収まらない俺を横目で睨みながら遥さんが俺の背中をポンポンと叩く。 「……辞めないよな?」 「辞めませんよ」 そっか、と答えた遥さんが今までで一番の笑顔を見せた。 この人は………あくどい。 侑司さん、今なら大変だなぁて同情します。 応援はこれからもきっとしないけど、あなたたち二人がどうなっていくのか、俺も近くで見守ります。 俺の運命の相手を探しながら、の片手間ですけどね。

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