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改めて誓います。

リビングのソファに凭れた侑司に後ろから抱っこされる。 「ここにいてくれて良かったです」 「お前の実家かと思った?」 「前の時は実家に帰る宣言があったので、それでも焦りましたけど。 今回は部屋に物が散らかってるし、遥さんお気に入りのアレコレがなくなってたから本当にヤバイと……」 お気に入り………? ソファの横に無造作に置かれた持ってきた荷物を引き寄せる。 ジッパーを開けて中を見てみると。 「なんだ、これ……」 「え、無意識だったんですか」 そこそこ大きいバッグの中には、侑司から貰ったアレコレ。 お揃いできるのは見えないトコだけですからと押し切られるようにプレゼントされてきたTシャツに靴下が何組も。 色違いで揃えられたネクタイが数本にネクタイピン。 いつも揃いで買う歯ブラシに洗顔料。 一番下には、いつも侑司が使っている枕。 ふはっと噴き出し、それはそのまままた涙になって頬を伝う。 「お前ばっかりかよ……」 一緒のタイミングで寝てくれなくなった侑司の代わりに抱き締めて眠っていた枕。 それをぎゅっと抱き締めた。 「なぁ……わかる?お前だけなんだって…お前がいればそれだけでいいんだって…」 グズグズと鼻を啜る俺の顎を侑司の指先がそっと撫で、横を向かせる。 枕を抱いた俺ごと抱き締め、涙に濡れた唇にチュッとちゅーをされた。 「はい……俺も遥さんだけです」 「もっと…」 「え?」 「もっと言って。いつもみたいに」 少し離れた顎の先にちゅーをすると、侑司が顔をくしゃりと歪めた。 「遥さん、好きです。大好きです」 「うん……」 証明書より婚姻届より、お前のその言葉が俺を支える。 お前とこれからも生きる、と誓える。 「帰ろ」 「え、いいんですか?」 「枕ないと寝れないだろ?」 「俺は遥さんがいればどこでだって眠れますよ」 いつもの笑顔になった侑司を振り仰ぎ、ちゅーをした。 帰ったらもっと濃厚なちゅーしような。 そう言うと、お預けをくらった犬のように少し悲しげな顔になった侑司がはいと頷いた。 「一回だけ、な」 口を開けて目を閉じる前に見えた愛しい人の顔は、俺が好きな、スイッチの入った顔だった……

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