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俺と生涯を共に。
白い壁のチャペル。
窓には天使が描かれたステンドグラス。
「どうぞお入り下さい。お待ち兼ねですよ」
スタッフさんの言葉に治めた鼓動が一気に跳ねる。
まさか。
震え出した手でゆっくりとドアを開ける。
手前の座席にはあまり光が届かず薄暗い。
大きな天窓からの光溢れる一番前の席に薫さん夫婦と、正さんに紀さん夫婦。そして俺の両親。
そして、祭壇に一人立っていたのは。
「遥さん……」
上手く歩けたのかわからない。
よたよたとみっともなく歩いたのかもしれない。
遥さんの差し出された手と遥さんを目指しただ歩いた。
手を握られ、遥さんの熱を感じてようやく現実だと把握できた。
「遥さん、これ…」
「サプライズ成功だな」
赤い耳にその場で齧り付きたくなった。
神父さんがにこやかに入ってくる。
まさか、本当にそうなのか。
「瀧田侑司。汝は健やかなる時も病める時も水元遥を愛し、生涯添い遂げることを誓いますか」
言葉が出ない。
唇が震える。
言いたい言葉は一つだけなのに、出てくるのはしょっぱい涙だけ。
「誓ってくんないの…」
俺にだけ聞こえる声で遥さんが言った。
握られた手を強く強く握り返した。
「………誓い、ます」
うんと頷いた神父さんが遥さんに向く。
「水元遥。汝は健やかなる時も病める時も瀧田侑司を愛し、生涯添い遂げることを誓いますか」
「誓います」
遥さんの声に涙が混じった。
「では、誓いのハグを」
神父さんの言葉に涙が止まった。
遥さんと向き合い、遥さんを見つめる。
「キスはさすがに無理だろ。互いの両親いるし。だからハグな」
ボソボソと小声で遥さんが言う。
「遥さん」
「え」
「誓いと言えばキスと相場は決まってます」
「え」
驚いて止まる遥さんの顎を持ち上げ、「え」の形のまま固まった唇にキスをした。
わぁ!と聞こえた声は華さん。
角度を変えてさらに深く、と思った俺の脚が遥さんに踏まれるまで遥さんの項を掴まえた誓いのキスは続いた。
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