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第5話
昨日の放課後葵が犯された教室に、朝が来た。
やはり、何事もなかったかのように一日が回り始める。
だが、今日はいつもと違うことがひとつ起きた。
「転入生を紹介しよう」
「深見 綜大(ふかみ そうた)です」
がっしりとした体つき、甘くないまなざし、低く重い声。
クラスの生徒たちは、ちょっと引いた。
「実は喧嘩がもとで、前の学校に居られなくなってここに……」
「深見くん! そういう事は言わなくていいから!」
焦る教師に、教室は笑いに包まれた。
強面に見えるけど、ジョークの言える男だ、と深見はみんなに思われたのだ。
ただ一人、葵を除いて。
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