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俺を呼んだくせに、奴はぐっすりと寝ていた。 酒を入れたときのこいつは怒鳴りつけて揺さぶりながら起こさなければいけないことを俺はちゃんと知っている。 俺のビーズクッションに埋まって寝ている世界で一番好きな人。 このままずっと、俺のところにいればいいのにね……。 「ごめん、ショウ」 こんなこと思ってごめん。 好きになってごめん。 俺は跪き、顔を近付ける。 「ぅー…ん……、アキ…ぃ〜……」 むにゃむにゃ言いながら彼は俺の名を呼ぶ。なんてことはないただの寝言。 つっ、と音も無く俺の頰に涙が伝った。 そう。俺はアキだ。俺はお前の親友のアキ。俺は誰よりも信頼されているアキ。 そこから離れたくないから、俺は失うことを選んだのだ。 片想いの終止符に、酒臭い唇に自分の唇を押し当てる。 たった一瞬。時間にしてほんの二秒ほど。 最初で最後の味気ないキスは、きっと忘れることが簡単だろう。 「好き、だったよ。……(しょう)」 好きだった。人生で初めて好きになった人だった。一番好きで大事だった、翔。 こいつを翔なんて呼ぶのもこれで最後だ。 もう俺たちは、彰と翔じゃない。 こんな状況でも、ショウは薄く笑みを浮かべていた。 さようならだ、ショウ。

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