7 / 35

第7話

「ご、ごめんなさい!」  慌てて離れた忍だが、手にした本は離さなかった。 「あの……、この本に、サインしてくれませんか……?」 「サイン!?」  さらに恥ずかしいことに、俊介のペンネームは『テヅルモヅル』だった。  深海に棲む生物からもらった名前だが、こんなことなら、もっとカッコいい名前にしておけばよかった!  同人誌と黒のマジックペンを手にして、忍は瞳を輝かせている。  仕方がない。これも新入部員への歓迎の一環だ。  俊介はペンを受け取り、本に丁寧に字を書き始めた。

ともだちにシェアしよう!