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第12話
「満開の、ちょっと前くらいかな」
「そうですね」
二人で校庭へ出て、桜並木を見上げて歩いた。
入学早々、こんな良いことが起きるなんて。
忍は、そんな風に思いながら歩いた。
桜を眺めるふりをして、見るのは俊介ばかりだった。
「伊吹くんは、さ」
「あ、伊吹でいいです」
(忍、でもいいです!)
「じゃあ、伊吹はあの話みたいに、どちらか選べ、って立場になったらどうする? 選べる?」
「あ……」
森先輩は、自分を投影した作品について尋ねてるんだ。
あの時は選べなかった、森先輩。
僕は。
僕だったら。
今の僕なら……。
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