3 / 112

1-3

すでに校内に鳴り渡った一限目開始のチャイム。 「今までよく我慢したな」 「ガマン、してきたのにッ……センセェが昨日さわっから……っ、ぅ……ぅ、ぅ……っ」 「そうだな。今までの苦労も水の泡、か」 「う、うッ、ッ、ぅッ……この……ッ……変態教師ッ……あう……ッ」 相変わらず扉に縋りついたままの岬の背に志摩は密着していた。 足元に絡まる下肢の制服。 熱もつ股間に前後から差し込まれた志摩の両手。 支える必要もない、申し分なく勃起したペニスの下で緩やかに蠢く五指と五指。 第二次性徴で授かったヴァギナとクリトリスが愛撫される。 昨日の放課後、自分でも敢えて深く触れてこなかった、当の志摩に初めて暴かれたばかりの肉欲がさらに膨れ上がっていく。 温かな膣孔に中指と薬指が難なく呑み込まれ、浅く出し()れされて。 長く骨張った指が前後する度に蜜がふんだんに漏れ、火照る褐色の内腿にまで伝い落ちていく。 静寂に紡がれる卑猥な音色。 硬さを帯びてきた肉芽を指の腹で小刻みに刺激された。 「んうぅうぅぅ……っ」 やべぇ、これ。昨日より感度上がってやがる。 それに、志摩センセェの指が……昨日より深いトコまで……。 「あっ?」 岬の背筋がゾクリと震え上がった。 第二関節まで捻じ込まれ、腹側のシコリをソフトに突き上げられ、ろくに触れられていないペニスまでが露骨に悶絶した。 「あ……っ? あ……っ? あ……っ?」 指姦のリズムに従って声を上げる岬に志摩はすぐ耳元で教えてやる。 「ココはな、前立腺。男のGスポット」 「んなっ……とこ、いぢんじゃねっ……んんん……っ」 「お前の体だと。後ろからいくより、ココから攻めた方が位置的にダイレクトに感じるんだろうな」 「う、後ろって……ふ、ふざけんなッ、んなとこッ、絶対ぇッ、さわんじゃねぇぞッ」 「得だな」 「は……あ……ッ……?」 「お前なら男と女の快感、一度に共有できる」 ムニ、と肉芽なるクリトリスをつままれた。 岬は堪らず仰け反った。 ヴァギナどころかペニスの割れ目も先走りに滲んで濡れ出した。 初心な色に彩られた先端を志摩が掌で擦ってやれば、反射的に膣孔が締まり、指二本を容赦なく圧してしまう。 深い抜き()しがゆっくり繰り返されると岬は咄嗟に自分の手首を噛んだ。 「ふぅぅぅう……ッ」 獣めいた吐息を吐き出したヤンキー淫魔に志摩は苦笑いを浮かべる。 強引に岬の唇から彼自身の手首を退かすと、代わりに自分の指を突っ込んだ。 「もごっ!?」 「噛んでもいいけど。食い千切られるのだけは御免だからな」 「んぐぐ、ぐっ、んぐぅっ……んぶぅううぅン……ッ……ッ……ッ……!!」 ヴァギナを集中的に巧みに攻められた岬は……とてもじゃないが加減できずに志摩の指に歯を立てた。 志摩は特に責めなかった。 好きなだけ岬に噛ませてやった。 メスの性感帯を開発された上での昨日振りの絶頂へ、直後に成す術もなく射精、怒涛のオスメス連続絶頂に岬の意識は混濁した。 ちゃんと後始末して服を着せた志摩は平均サイズをやや上回る男子生徒に肩を貸してやり、素知らぬ顔で保健室まで連れていくのだった。 インキュバスの血を引く場合の一例として。 男ならば持久力に(すこぶ)る長けた強靭な下半身を持ち、女であれば第二次性徴期に男性器が発現する。 サキュバスの血を引く場合の一例として。 女ならば極上の名器に恵まれ、男であれば第二次性徴期に女性器が発現する。 インキュバスの血を引く女、サキュバスの血を引く男。 一例となる両者に共通するのは、生まれ持った性別が本来持つべき生殖機能が極めて低く、第二次性徴期に発現する「淫魔の性」に種の存続を左右されることだった。     我が身が抱え込んだ矛盾、自分が何者なのかわからなくなる「性の混沌」に悩むものも多数いた。 第三次性徴期において第二次性徴期に発現した器官が精通もしくは初潮を来たすと、その生殖機能が各自正常にはたらき出す仕組みになっている。 インサバスの岬だけが異例だった。 オスの能力を十分有しており、第三次性徴期を迎えればメスとしての生殖能力も兼ね備えるようになる。 つまりオスとメスどちらの機能もいずれ併せ持つことになるレアな淫魔筋に相当した。 インキュバスとサキュバスが愛し合う。 息を潜めつつも、人間を身籠らせる・人間の精を奪うことが本能に組み込まれている淫夢魔はヒト相手の異種交配を常としてきた。 繁殖が同種交配に限定されているヒトと違って、逆に同種間での受精がメカニズム上困難とされ、淫夢魔同士の子が誕生するのは極稀なパターンと言えた。 以上の淫魔筋に共通して言えるのは、第二次性徴期の間、いわゆる思春期時代に「とめどなき淫欲」に翻弄されるという点にある。 一部、あっけらかんと受け入れて多種多様な性生活を謳歌するものもいたが。 それぞれ異なるタイミングでやってくる第三次性徴期に突入すれば落ち着くとも言われていた。 一方で自身が淫魔筋だと気づかずにありふれた人間生活を送るものもいる。 生まれ持った性別で「淫魔の性」や「性の混沌」に悩むこともなく彼らは彼らなりの人生を歩んでいる。 「いつまで寝てる、もう昼休みだぞ」 「ッ……勃起して起きれねぇんだよ、ムッツリ教師」 「手のかかる生徒だな」 保健室の養護教諭は昼食をとりにき、他に休む生徒の姿もなく、二人きりになった保健室。 真っ白な仕切りのカーテンを完全に閉じ、内側に残った、救いの手を差し伸べてきた担任の淫魔教師。 指先に刻みつけられた歯形が視界に写り込んで岬は何故だかほっとした。 学校で初めて会った淫魔筋の志摩センセェ。 センセェなら、俺の何もかも、受け止めてくれるだろうか。

ともだちにシェアしよう!