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7-2
キッチンと洋室を仕切る引き戸は閉ざされて暖房がよく効いた室内。
加湿器はなく、ふとした拍子に喉の渇きを覚える。
「えーと」
岬は三人掛けの革張りのソファに座っていた。
志摩も同じソファに座っていた。
ただ、二人とも肘掛けを背にして両サイドに詰めており、間にスペースをもたせてソファの上で向かい合うような格好だった。
「えーと」
完全にまごついている岬に志摩は端的な指示を下す。
「ブレザー。脱いで」
岬は何度も瞬きした。
背もたれに片頬杖を突いている志摩を伏し目がちに睨み、言われた通り、エンブレムつきのブレザーを脱いだ。
「その辺に放り投げていい」
「皺、できんだろーが」
「放り投げて」
むっとした岬は志摩に向かって放り投げた。
立ち上がった志摩はダイニングチェアにかけられていたモッズコートの上にブレザーを重ね、また同じ場所に戻ってきた。
「よくできました」
按配のよい位置に片肘を突かせ、向かい側で強気を保ちたくとも動揺を隠せないでいる岬に、次の指示を。
「足。もっと開いて」
ヒクリと震えた喉仏。
褐色の肌身がじんわりと発汗した。
「できない?」
戸惑い、躊躇していたら、意地悪な笑みまじりに挑発された。
岬は正直なこどもみたいに口を尖らせる。
可能な限り壁の方へ視線を逃がすと、ソファに乗り上がらせていた両足をぎこちなくM字開脚、担任の真正面で股を開いてみせた。
「……こうかよ」
「そうそう。お利口さん」
「ッ……あのなぁ……!」
……大体さ。
志摩センセェの指示を待つ必要ねぇだろ、自分のタイミングでおっ始めりゃあいいじゃねーか、オナニーくらい、別にどうってことない……。
「ベルト外して」
頭ではそう思いながらも志摩に指示されると反射的に従ってしまう。
「ズボンのホックも」
短い命令を寄越されるだけでいとも簡単に興奮してしまう。
「服越しに触って」
「ん……」
「違う、そっちじゃない」
「ん?」
「乳首。服越しに触って」
「……」
調子乗ってんじゃねーぞ、このエロ教師……。
なーんて腹の中で毒づきながらも命令に従順に。
岬は制服シャツ越しに自分の乳首にたどたどしく触れた。
「まずはソコで気持ちよくなってごらん」
岬は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「へ……変態教師……なんか趣旨変わってんじゃねぇか、これ……」
体裁のため不平を口にして、ふに、ふに、シャツ越しに胸の突端に指先を押し当てる。
遠慮がちにツンと芽吹く、指の腹に引っ掛かる突起を、そっとくすぐっては、そっとつねる。
「家ではどんな風にしてるの」
すぐ真正面にいる志摩から懸命に視線を逸らしていた岬の頬がさらなる火照りを帯びた。
「好みのオカズはどんな?」
志摩と会うまでは。
顕著な第二次性徴なる淫唇はことごとく無視し、適当な材料を用い、投げ遣りに事務的に処理していた。
志摩と会ってからは。
もっぱら担任からのご奉仕を思い出しては、彼に触れられて目覚めた性感帯を刺激し、積極的に快感を求めるようになっていた。
「もしかして」
「ッ、う、うるせぇ、そんなんプライバシーの侵害だッ」
「手が止まってる」
「は?」
「さぼっちゃだめだよ、反抗期ちゃん」
悔しい。
悔しいのに言いなりになってしまう。
次の命令を待ち望んでしまう。
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