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だけど教えてくんなかった志摩センセェも腹立つよな。 不貞腐れながらもちゃんと登校し、四月も半ば、馴染んできた席についていた岬は仏頂面で教室前方を睨んだ。 「今日は教科書十八ページから、十四日だから出席番号十四番、読んでくれ」 一限目の地理、担当教師は志摩だった。 無地のワイシャツにセーターを腕捲りし、片手で教科書を支え、生徒からは「寝れる授業」と言われている通り、居眠りしている生徒をスルーして淡々と授業を進めていく。 「ふがっ」 前の席で俯せになって堂々と寝ていたクラスメートに腹が立った岬、思い切りイスを蹴った。 「なっ、なに、中村くん、なに!?」 「授業中だろーが」 他の授業では平気で居眠りし、なかなかプリントを受け取ってくれない岬に注意されて口をへの字に曲げたクラスメートだが、仏頂面で睨まれて反射的にこっくり頷いた。 ま、一年前の俺は居眠りよりもっとひでぇ態度とってたけどな。 センセェに自分も淫魔だっていきなり衝撃告白ブチかまされて、もう一年、か。 この一年間、いろいろあったようで何にもなかったような。 志摩センセェとの関係も大して変わらず……。 『気をつけて帰れよ』 二年生になっても一年のときと同様に、放課後や週末、岬は志摩の家に入り浸っていた。 持て余すしかない「とめどなき淫欲」に発熱する体を慰めてもらっていた。 で、それ以上でも以下でもない。 相変わらず本番には至っていなかった。 『なんで本番してくんねぇんだよ!?』 『半熟淫魔にはまだ早い』 軽くあしらわれてばかり、いい加減むしゃくしゃして襲い受けよろしく志摩にのしかかっても、意外と力持ちな山岳部顧問に引き剥がされるのがパターン化していた。 一年のときは慰めてもらえればそれで満足していた。 同胞意識で安心できて、体は満たされて、深い眠りにつくことができた。 でも最近になって変わってきた。 俺と本番しようとしねぇ、肝心のキス一つしてくれない志摩センセェ。 ただ慰められるだけじゃあ物足りなくなってきた。 なんでだよ、ケチ、減るもんじゃあるまいし。 同情の慰めだけじゃあ足んねぇよ、センセェ……。 「ッ……」 ふとした瞬間、志摩と目が合って岬の背筋はピーンと硬直した。 「……次は出席番号四番、読んでくれ」 すぐに視線を逸らされて、内心、しょんぼりした。 「ッ……おい、黒板の字ぃ、薄くて読めねぇよ! ケチってチョーク節約すんな!」 しょんぼりしている自分自身が腹立たしく、代わりに志摩を威嚇、著しい反抗期モードがぶり返したヤンキー淫魔は……。 志摩センセェがそーいう姿勢を貫くつもりなら俺にだって考えがある。 そこまで頑なに俺の欲求拒むんなら、誰か、別の奴と本番してやっからな!! ……しょーもない暴走をおっ始めようとしていた……。

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