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「今日の花火大会楽しみ~」
「去年より早まったよな、もっと月末寄りじゃなかった?」
「誰か女子の知り合いとか連れてこないの?」
「女子の知り合いなんか、いーまーせーん」
梅雨が明けて真夏日の最中 に行われた終業式。
式が進められた講堂や教室は冷房が効いていて、本日夜に開催される花火大会の話題でクラスメートらが花を咲かせている傍ら、岬は上の空でいた。
「なー、マジで中村来ないの?」
問いかけられてもすぐに気づけず、頬杖を突いてぼんやりしていたら、肩を揺さぶられた。
「あ? なんだよ?」
「今日の花火! なんで来ねーの?」
「あー……用事あんだよ」
「また中村ママのお店の手伝いとか?」
「いや、今日は違ぇ」
「じゃあ何だよ」
「ッ……よ、用事ったら用事だ、用事」
言葉を濁しまくる岬に友達らは顔を見合わせる。
「もしかして、とうとう彼女できた?」
……志摩センセェって俺の彼女になんのか?
……俺の方が彼女だったりすんのか?
とうとう明日から夏休みだ。
『夏休みまでの宿題。どこに行きたいか考えておくように』
つまり今日が回答期限最終日だ。
どうしよ。
ぶっちゃけ決まってねぇ。
盛り上がるアクション映画とか、でも志摩センセェって予定調和な展開馬鹿にしそうだよな、それなら鮫かっけぇから水族館とか、あと温泉とか……あれ、旅行はアリなのか? 生徒と先生ってバレないよう変装すべきなのか?
そんなかんじで延々と堂々巡り。
一つに絞れねぇ。
だって、これって、デートだろ?
外に飯行くのだって稀だし、行っても阿久刀川サンと黒須サンがいる店だし。
センセェんちに入り浸ってばっかで二人でどっか出かけるっていうのは初めてだ。
やべぇ。
もうドキドキしてきた。
それに誕生日の今日は志摩センセェんちに泊まることになってる。
『今日の夕食は俺が作るから』
……昼、抜いておくか。
……つぅかさ。
まさか、もしかして、ひょっとして。
今日、やっと本番いけんじゃーー
「あー、中村の顔赤い! やっぱ彼女できたんだ!」
また上の空になりかけていた岬はハッとした、頬の紅潮を止める術がなく、机に「伏せ」して友達に極力見られないようにした。
「いつの間に! このすけべ! どえろ!」
「カノジョと花火してえろいことするつもりだ~」
「うわぁ、耳まで赤くなってる」
「ッ……耳つねんじゃねぇ!」
キス解禁までには辿り着いたが。
岬は志摩との本番を未だに迎えていなかった。
……今日、一端ウチ帰ってシャワー浴びてからセンセェんち行こうかな……。
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