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「濡宇朗、探しにきたんだ」 ジンジャーエールを半分近く一息に飲んだ後、岬は言った。 「高級ブランドのスーツ着た男に声かけられて、そのままソイツの車に……深い付き合いみてぇだった」 最初はスーツ男の台詞を聞いて抱いた違和感。 今は濡宇朗そのものに引っ掛かりを感じていた。 いや、常日頃から彼に対して疑問は持っていたが、岬はわざと見過ごしていた。 どこの学校に通って、どこに住んでいるのか、友達ならば知っていて当たり前のことを一切知らない。 マイペースで気紛れな行為には父親の百合也で免疫があるし、隣にいて安心できる居心地のいい巣を手放したくなくて、むやみやたらと追及しないようにしていた。 「帰るつもりだったけど、偶々同じベンツ見つけて、近くを探してみたら二人が歩いてて……後、つけた……そんでこの店に入ったんだよ。阿久刀川サンとは確かに入り口で会った、でも招いてもらったってだけで拉致されたとかじゃねぇ」 「今度から特技の欄には尾行って書いたら」 カチンときた岬は隣を睨んだ。 隣の志摩は乾いたコースターを直視していた。 「深く気にかけてるんだな」 片頬の上でせめぎ合う冷たげな青いライトと陰影。 空調は効いているがダンスフロアの騒々しい熱気が始終背中に伝わってくる。 冷たいのか、熱いのか、岬は志摩に無性に触れたくなった。 体の奥底がジンジンと疼いて爪の先まで火照りそうになった。 ……馬鹿だな、俺、もう触らないって宣言した相手に空しく盛ってんじゃねぇよ。 どうしようもなく膨れ上がりつつある欲望を我慢するため、残りのジンジャーエールを速やかに呑み干し、岬は立ち上がった。 感情の乱れがわかりやすい足取りでバーカウンターを離れる。 心身の火照りを人いきれの熱気で誤魔化したくて、狂的にはしゃぐ男女の間を自棄になって進んだ。 ……変だな。 ……瓶一本飲んだばっかなのに喉が渇く。 一先ず、このクラブのどこかにいる濡宇朗を見つけよう。 本当の濡宇朗が知りたい。 『君も淫魔だよね』 急に目の前に現れて、どうして俺に近づいてくれたのか、一緒にいてくれたのか、理由を聞きたい……。 「岬」 熱狂の渦の真ん中で岬は棒立ちになる。 片腕を掴まれ、振り返れば、すぐ背後に志摩が立っていた。 「こんな場所に生徒を放置できるわけないだろ」 教師と生徒。 その繋がりも後一年半くらいで終わる。 同種ってだけの括りで、俺が高校を卒業すれば特別な関係でもなんでもない、センセェとはただの他人同士になる……。 「俺も一緒に探すから」 自分の腕を掴む志摩の掌の熱さに心臓を痺れさせて、岬は、こどもみたいにコクンと頷いた。

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