「何考えてるんだ、お前」 岬の斜め前に立った志摩は、スーツ男の胸の上で気怠げに微笑む濡宇朗を険しい眼差しで見据えていた。 ……めちゃくちゃ怒ってるじゃねぇか、志摩センセェ。 ……こんなブチギレてるセンセェ、初めて見る。 「岬の前で、別の男の腹の上で。よくそんなのうのうとしていられるな」 岬は……小さく息を呑んだ。 自分の心情を思って志摩が怒りに囚われているとわかり、胸が張り裂けそうになった。 「オレの可愛い岬をこっ酷く傷つけておいてよく言う、このクソドミナント」 濡宇朗もスーツ男も服は着ていた。 ただ、トランス状態にあるスーツ男は岬と志摩のことなど眼中にまるでなく、信者さながらに濡宇朗にただただ縋りついていた。 「オレはこのヒトに添い寝してリラックスさせてあげただけ。お前の方が重罪だよ、オレに説教垂れないで、耳が腐る、忌々しい」 「とにかく離れろ」 「おい、志摩センセェ……」 志摩はソファへ歩み寄ると濡宇朗の手首を引っ掴んで立ち上がらせ、そんな手荒い様を濡宇朗はせせら笑い、岬はこれ以上険悪ムードにならないよう二人の間に入ろうとした。 不意にスーツ男が起き上がった。 彼は濡宇朗を取り上げられたことに激昂した。 拳を振り上げて志摩に殴りかかろうとした。 志摩と濡宇朗の間に割って入るつもりだった岬は、咄嗟に軌道修正し、志摩とスーツ男の間に割り込んだ。 「岬ッ」 「！！」 結果、岬がスーツ男に殴られて。 志摩は名を呼び、濡宇朗は絶句した。