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ブラインドがきっちり下ろされた寝室にはベッドしか置かれていなかった。
無駄のないシンプルなフォルムのフレームは深みあるブラウンでキングサイズ、マットレスは一枚物、ホテル仕様の枕が二つ、単身用にしては贅沢な寝床であった。
「壊すって……どーいう意味だよ」
広々としたベッドのほぼ真ん中に押し倒された岬は、真上に迫る志摩に心臓を元気いっぱい飛び跳ねさせつつ、照れ隠しに辺りをきょろきょろ見回した。
「いちいち物騒な言い方すんなよ、それにこの部屋、ガチすぎねぇか、ベッドルームにほんとにベッドしかねぇ」
「寝室ってそんなものだろ」
「さすがに……ちょっと極端過ぎるんじゃねぇの」
真白なシーツの上で初めての寝室訪問にそわそわしている岬に志摩は教えてやる。
「このベッドは新調したばかりだよ」
ゆるゆるだったネクタイに手をかけ、造作なく蔑ろにした。
「ベッド本体は組立だったから何とかなった、でもマットレスの搬入には苦労した。クレーン車で吊り上げて窓から運び入れてもらった」
制服シャツが第一ボタンのみならず、全て、器用な指先によって速やかに外されていく。
「俺と岬のためにこのベッドを選んだ」
志摩に濡らされた唇をもどかしげに疼かせて、岬は、微かに息を呑んだ。
「こ……こんな豪華なベッド、奮発しすぎンだろ」
ふわふわしていた二人暮らしのビジョンが急に明確になって、現実味を帯びてきて、胸を詰まらせた。
いつの間に準備を進めてくれていた志摩に止め処ない恋心が込み上げてきた。
「生徒のお前にはまだ早いと思ってた」
はだけたシャツの狭間に覗く、我が身を魅了する瑞々しい褐色に志摩は触れた。
「生徒と教師の関係、限界まで味わいたいって。お前があんまりにもいじらしいこと言うから」
肌身をゆっくり辿る掌に胸を反らし、焦れったそうに身を捩じらせた岬に覆い被さる。
「本当は卒業してからって考えてたのに」
「センセェ、もういいから」
「うん」
「早く」
「うん」
もう我慢できずに岬は志摩の頭を掻き抱いた。
「俺のこと壊していいから志摩センセェのモンにして……」
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