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『この体に()れてるだけで気持ちよくなって、俺にひどく感じてる様を見ていたら他のことは何も考えられなくなった』 最初はそうだった。 でも、もう、それだけじゃあ足りなくなった。 「岬」 おもてなしが長引く余り、いつの間にやらベッドの上で虚脱していた岬は気怠そうに寝返りを打った。 鼻先をふわりと掠めたボディソープの香り。 瞼を持ち上げてみれば、霞む視界に風呂上がりの志摩がぼんやり写り込んだ。 「志摩センセェ……いつの間にシャワー浴びてきたんだよ……?」 「お前が休んでる間、ざっと三分くらいで済ませてきた。ほら、水」 上半身に制服シャツを引っ掛けた岬はもぞもぞ起き上がり、受け取ったペットボトルを傾け、ミネラルウォーターを一頻り飲んだ。 飲みながら、今は自分に背中を向けている、ベッドに腰掛けた志摩の後ろ姿を横目で見やった。 担任はボクサーパンツしか身に着けていなかった。 放任気味とはいえ、曲がりなりにも山岳部顧問、身長178センチの体はシャープで実用的な筋肉を隠し持っていた。 三月の夜に冷たいシャワーを浴び、しっとりと湿り気を帯びた肌。 張り出した肩甲骨の溝、背筋の窪みには水滴が残っていた。 見慣れない剥き出しの肩に思わず縋りつきたくなる。 夏場でも鉄壁なる腕捲りワイシャツにガードされている二の腕を拝見できるのも貴重だった。 そもそも、これまで志摩の裸身を一度も目の当たりにしたことがなく、横目で食い入るように観察していた岬は。 「ッ……ごふ!」 途中で飲んでいた水を噴き出した。 「どうした、慌てて飲み過ぎたか」 「ッ……まぁ、そんなとこ……」 ……志摩センセェ、勃ってる……。 岬は乙女みたいに無性に恥ずかしくなった。 「ほら、貸して」 残り半分になったペットボトルを手渡す際、志摩全体を直視するのにも躊躇われた。 「あ……ありがと、センセェ」 「うん」 「えーと、汗かいたし、俺も浴びてこよっかな」 「だめ」 即座に拒まれた。 「岬はそのままでいい」 広いベッドに容易く押し倒されて。 捕食者といわんばかりの傲慢さで組み敷かれた。 「反抗期ちゃん、もしかして怖気づいたとか?」 心臓が早鐘のように打つ。 志摩の前髪の先から滴った雫が頬に落ちただけで胸の奥が爆ぜそうになった。 「だッ……誰が怖気づくかよ、なめんじゃねぇ」 「じゃあ触って」 さらりと言ってのけられた欲求に岬はあからさまに動じてしまう。 「俺の、触って」

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