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うぉぉぉぉぉ!!! 潤を見つけた途端、静月に手を離された俺は心の中で叫んでいた。 何だよバカヤロー! 潤は静月の肩越しに俺を見つけると、ニコリと微笑みながら手を振って来た。 「こんにちは~」 「あ……こんちわ……」 「もしかしてどこか行く途中だった?」 潤は上目使いの可愛い表情顔して、俺と静月を交互に見ながらそう尋ねた。 マジ可愛いよな……、静月が好きなのも納得できるような、女子ばりの華凜さだ。 「いや、教室で会ったから一緒に出て来ただけだよ」 おぃぃぃ! 俺には決して見せたことの無いような、誰もがうっとりするような優しい笑顔で潤を見ながら静月はそう言った。 クソがぁ! てめぇ、そんな素知らぬ顔して堂々とそんな酷い嘘をつけるな! マジ最低、ほんと最低! そりゃぁ……潤は本命だろうけど……、これは無いんじゃねーか? 「そっかぁ、何時も葵くんと一緒に居るから、やきもちやいちゃうなぁ僕」 「バカだなぁ」 静月は潤の頬に手を当てて優しく撫でていた。 そして潤は嬉しそうに静月の腕に絡みつき、俺は所在投げに放り出された手をきつく握りしめる。 死ね静月!!! もう二度とお前には騙されないし、近寄らない! バリアだ、バリア! 近寄って来れないように鉄壁のバリアを築いてやる、俺に近寄るんじゃねー! そんなムカついた心を抱えながら、目の前でいちゃつく二人を追い越した去り際、潤が明るい声で俺に向かって『またねー』と言って手を振ってきた。 ……呑気でいいよな。 むしゃくしゃしたけど、まあコイツは何も悪くないので、絶対的悪魔である静月を視界に入れないよう完全無視するように、潤には軽く手を振り返してその場を去ったが、歩きつつも背中に刺さるような視線を感じ無くもなかったが、この俺でも人としてどうだよって行為を黙認してやったのは、未練がましく余計なことを言って、動揺を悟られたく無かったのと、頭の中は怒り沸騰中だったので、そこで同じ空気さえ吸いたく無かったということもあり、俺はとにかく早急にそこを離れたかった。 ほんとムカつくーーーーっ! 何だよなんだよあの態度は! 俺の時とえらく違いやがって! そんなに彼奴が大事なら俺にちょっかいかけんなよ! ……でも俺が悪いのか? 隙だらけで、ちょっと絆されるとすぐその気になって静月にホイホイ付いて行くとか……、身体がどうのこうのと言い訳するより、メンタルの弱い俺がダメダメじゃねーか……。 なんで俺あいつとこんなに関わってしまったのだろう……、好奇心だけでは済まされない精神的ダメージは思った以上にキツイ……。 そして、明日も同じ教室で机を並べて勉強するのかと思うと憂鬱だ。 そう思うと、どーーんと気分が落ちてしまった俺は、帰途に着く道すがら、茜色に染まりつつある綺麗な空を見上げながら溜息を吐いたのだった……。

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