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朝になり、眠い目を擦りながら空の部屋から枕を持って出て来た俺は、廊下でバッタリすずいに会った。
「え?お兄ちゃん空の部屋で寝ていたの?」
昔、空がもっと幼い頃、俺の部屋に来ることはあったが、最近じゃ一緒に寝ることも無くなっていたので、珍しいのかそう尋ねられた。
「そうだけど?」
「どうして?」
「どうしてって……、昨日、大河のアップした動画見てたら怖くなって、空のベッドに潜り込んだ?」
「えーっ、空じゃなくてお兄ちゃんが?ウケるーっ」
そう言って、ケラケラ笑っている。
「おま、マジで怖いんだからな!頭割って脳みそ取り出すんだぞ!」
「やめてよー、朝から気持ち悪いこと言うの!」
自分で言って、思い出したら気分が悪くなった……。
すずいはプンプン怒りながらキッチンへ向かう。
まあ、良いのか悪いのか、あの恐怖動画がいろいろ忘れさせてはくれたが……。
だがその後、洗面所で鏡を見た途端、驚きで眠気が吹っ飛んだ。
首筋に赤い無数のキスマークが、隠しようもない場所に散らばっていて俺は動揺する。
でも、今まで女の子と遊んだ時も、こんな風についたことあったっけ……、問題は将生だが……、あいつは感もいいし疑うよなぁ……、これは隠しようがないけど顔を俯き加減にしてるとバレなくもないかな、もしバレたとしても、もうこれは察してもらおう、そん時はしょうがない、あいつは俺がビッチなことは知っている。
何でも知っている……、俺の嫌な所や良い所も……良いところ……?
うーむ、今となれば何も思い出せない……何だろうな。
イケメンだと自負してたんだが、静月を近くで見てると何だかいろいろ自信が無くなった。
女子みたいにクヨクヨ悩むし……ああ、嫌だ……、俺ってこんな性格だったっけ?
いや、もうどうでもいいや……、なるようになるだろう。
そんな事を考えてるうちに時間が無くなって来たので、慌てて身支度を整えて家を出た。
嫌なことがあっても良いことがあっても、誰にも朝は変わりなくやって来る。
今日の俺の足は重いが、何時ものように電車を降りて登校していると、後ろからやって来た環ちゃんが手が俺の腕に絡んで来た。
「おはよ~葵!」
「おはよ~」
今朝も環ちゃんは可愛かった、そして相変わらずのDカップが俺の腕を優しく圧する。
ああ、懐かしい膨らみ……、すっかり忘れかけていた女の子の柔らかさと、花のような甘い良い匂いが環ちゃんから漂ってくる。
癒しだなこれ……、なんて、ぼんやり浸っていたら環ちゃんが驚いたように声を出した。
「あ!」
「なに?どした……」
「葵、その首のキスマークの数……」
げっ、早速気が付かれた、早いな環ちゃん、やっぱ目立つよなぁ……。
「もぉ、私には忙しいからって嘘ついて、やることやってるぅーー!」
「えーと……」
この頃の諸事情により意欲低下中であり、確かに忙しいと嘘は吐いた……、だけど相手は環ちゃんの思っているような可愛い女の子では無い。
「環のこと、もう飽きちゃったのぉ?」
環ちゃんは形の良い唇を尖がらせて不満を零す。
「まさか!ないよ、それはない!これは……たまたま?なんとなく?」
「もー、そんな見え透いた嘘ついちゃってぇ、葵ってホント嘘下手だよね、だけどそんな所、正直でキュートだよ」
環ちゃんはそう言ってにこっと笑いながら、公然の場で俺の頬にチュっとキスをしてきた。
「ねぇ……今晩、来ない?誰も居ないんだ……」
そして環ちゃんが俺の耳元でそう囁いたと思ったら、次の瞬間、後ろからミクちゃんの声がした。
「やだぁ~、朝からなんの約束してるのよぉ!」
俺らが振り向くと、そこには静月を中心とした女子の一群が居た。
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