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げっ……。
ミクちゃんはさっき交わした言葉が聞こえたのか、意味あり気にニヤニヤと微笑んでいて、隣の静月はと言うと、何時もの澄ました顔して、どんな表情もしていない、だからそれが余計に不気味でもある。
多分、聞こえたよなぁ……。
でもそんなことどうでもいいや、静月には関係ないことだ。
そう思っていたら、静月が甘い笑顔で自分の回りを取り囲んでいる女子達に向けて言った。
「みんなごめん、葵に話があるんだ」
その一声に、女子はすぐさま反応し、道を譲るように静月の回りからパッと散る。
環ちゃんまで俺の腕を離そうとしたので、俺はその手を無理矢理引き留めた。
「え……だって静月くんが……」
環ちゃんが戸惑っている。
「いいのいいの、俺は別に話はないし」
「でも……」
明らかに困惑している環ちゃんに向かって、静月は誰もが舞い上がるような極上の笑みを零して言った。
「ごめんね」
「あ……はい!」
無駄に笑顔振り撒くなし……。
それで落ちない女子はいないだろうよ……クソむかつく。
環ちゃんはとうとう俺の腕から絡めた手を引っ込めると、一歩後ろに下がってミク軍団に取り込まれた。
何なんだよ、話とかねーし!
いつの間にか横に来ていた静月が、歩調を合わせながら並んで歩き、こっちを見ているのが分かったが、俺は気付かない振りして前を見ていた。
すると……。
「葵、今日俺んちに泊まりに来て」
落ち着いた声でそう言った。
え……?
行くわけないだろ、何言ってんだてめーわ。
「話があるから」
ふざけんな!
もう止めて欲しい、そうやって俺を振り回すのは。
「聞いてる?」
「うぜぇわ、行くわけないじゃん」
俺は顔を上げて静月を睨みつけた。
だが、すぐ横の静月は朝の光を浴びて瞳が薄く輝き、髪の毛の先までキラキラ輝いて見えた。
うわ……イケメン過ぎる、でも惑わされるな俺。
惹きつけられる目線を無理矢理剥がす。
「大事な話があるんだ」
静月の嘘は聞き飽きた、そして昨日の酷い仕打ちも忘れたい……。
だからもう俺はお前を信じていないし、どんな言葉にも耳をかさない。
「葵?」
尋ねるように、静月が俺の肩に手を掛けたので、俺はそれを振り払って告げた。
「俺に触んな、クソ野郎!」
思わず声がでかくなって、回りの連中がどよめいたが、そんなこと知ったこっちゃない、もう嫌なんだ静月に振り回されるのは……。
真剣な顔して俺を見返す静月の眉間が険しくなったが、もうどうでも良かった。
今はもう静月とは関わりたくない、正直言ってこれ以上傷つきたく無い……。
俺は足早に校門を潜り、先に教室へと向かった。
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