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131 長瀬香 <SIDE>
あれしきのビールで酔いつぶれるとか、可愛いけど最悪だなコイツ……、まあ街で拾った俺が悪かった。
能天気な此奴にしては珍しく、死にそうに暗い顔して歩く葵を見て、放って置けなかったのは事実で、飯でも食わせて元気にしてやろうと思ったのが運のツキ……、タクシー降りるまでは大人しくしてたから良かった。
流石に自宅に帰すわけにはいかず、俺のマンションに連れて来た。
「ねぇ……ここどこぉ……?」
エレベーターの中で俺に凭れ掛かりながら、虚ろな目で問う。
身体を支えてないと今にも崩れ落ちそうに足元が覚束ない。
「俺んちだよ、今エレベーターね、ほら歩けるか?」
「長瀬んち?へぇーーっ」
「へぇ、じゃねーよ、あれしきで酔っ払いやがって、て、学生が酒飲むんじゃないよ」
「きょうし、ぶっちゃってぇぇ」
「教師だし!」
「あー、そうだった~、保健室でエッチとかするからきょうしじゃ無いのかと……、あん時のながせ下半身丸出しで野獣だったよなぁ、ボコンボコン腰振っちゃってぇ」
「黙れ!」
こいつの前でいささかやり過ぎたのはわかっているが、あれは瑛斗が悪い、散々俺を煽りやがって、理性をぶっ飛ばす程に魅力的に誘うものだから、つい本気になってしまった。
昔から瑛斗を知っているが、更に磨きがかかっているように思う、その容姿も淫らな身体も……。
あれから何人の男と関係を持ったのだろうか……、想像するだけで心が痛む。
でも今はそんな感傷に浸っている場合じゃない、俺は声のでかいお喋りな葵の口を塞ぎながら、玄関のドアを急いで開けると、足に力の入らない身体を抱えて中へ押し込めた。
まったく、公共の場でペラペラと何てこと口走るのだ!
「靴脱げるか?」
「あーい」
こりゃ完全に酔ってるな……、身体は支えていたが、千鳥足の為なかなか靴が脱げないらしい。
「あれー、あれ……」
すったもんだやってる内、急に大人しくなったので顔を覗き込んだら……、顔色が悪い。
「ながせ……」
「ん?」
「きぶんが悪い……」
「え?ちょ……」
「うっ……!」
「ちょっと、待った!」
葵は『うっ』と口元を膨らます。
まてまてまてーーーーーーーっ!!!!
俺らは向かい合ってるわけで……。
ヤバイ!
「待て!トイレすぐそこだからっ!!!!!」
「ゲボッ……」
うわっ……最悪……。
………………。
今日は厄日か……、悪魔に憑りつかれたか……。
葵が吐き出した吐物が、支えている俺の服にも盛大にかかり、俺らはゲロ塗れになってしまった。
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