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「覚えてない……よ?」
それは、どこからどこまでのことを尋ねているのだろうか?
まあ、どっちにしろ光太郎さんの店を出たところまでしか覚えていないが……。
「自分がまっ裸で長瀬の家のベッドで寝てたのは覚えてる?」
「え?!」
まさかの……、なんでまっ裸?
俺が?
長瀬の家で?
「その顔は覚えてないよね?」
「……」
「葵はたった一杯のビールで酔い潰れて、長瀬にゲロ吐いて、その長瀬に風呂で全身洗われたんだよ?」
うげっ、まじか!
貞操の危機じゃん、大丈夫だったのか俺?
「どうしてそんなに無防備なのかな?」
「どうしてと……言われましても……」
なんか、敬語でた……。
「俺以外の奴に身体を見せて、しかも洗われるとか……どこか触られたとしても覚えてないよね」
うーむ……、確かに長瀬の野郎ゲイだしな、まさか悪戯とかされてないよな。
まさか……な。
「え……と……、でもそれは別にお前に非難される謂れは無いし……?」
なんでいつも俺が責められるんだよ、おかしいのはお前だろよ、腹が立ってきたので回していた腕を離して静月に背中を向けた。
「ほんと生意気だな」
「おまえがな!」
静月のベッドで安心したのも束の間で、あっと言う間に険悪なムードで、不貞寝体制に持ち込む俺。
でも何か身体に違和感を感じてシーツを接ぐって見れば……。
「え!?何だよこれ!」
俺の息子ちゃんの根元に、ステンレス製であろうコックリングが嵌められていた。
よく見ると、内側には何本かビスのようなものが飛び出ている。
これは……もしかして勃起すると刺さるやつか?
「おい、てめぇ……」
「ほんと何されても目覚まさないよね、この分じゃ長瀬に何をされたかも覚えてないな……」
「え……」
嫌だ、そんな怖い事言うなし……。
どうやら俺がかなり焦った顔をしていたらしく、静月の手が伸びて俺の頬を撫でた。
「流石にビビったようだな」
静月は意地悪そうにそう言った、だが頬を撫でる手は優しい。
「まじで……何も無かった……よな?」
「どーかな?」
「おい!」
静月は俺に覆い被さってきて、ゆっくりと唇を近づけて来ると、優しく軽いキスを落とした。
だが今の俺は静月の言葉が引っかかってそれどころではないので、無理矢理顔を背けた。
「やめろ」
「でも葵は葵だから、長瀬とセックスしても嫌いになれない……」
「え?」
えーーーっ!!!
長瀬とヤッたのか俺?
マジ……?!
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