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149 長瀬香 <SIDE>
浴室から葵を抱いて廊下へ出たところで、玄関から入って来たであろう瑛斗と鉢合わせした。
「あ……!!!」
「!!!!!」
当然のごとく瑛斗は驚いて、そのアーモンド型の目を見開き言葉に窮している。
まあ……当然だよな……。
俺は一糸纏わぬ姿で、同じくまっ裸の葵をお姫様だっこして出てきた所に遭遇してしまった。
当然、すごく……すごーく、マズイわけで……。
「瑛斗……?」
見る見る間に瑛斗の眉間に皺が寄り、表情が険しくなっていった。
まずい……、瑛斗を怒らせたら手が付けられなくなるぞ……。
「どういうこと……?」
静かに押し殺したような声で、俺を睨みながら呟いた。
「誤解だからね……、ちょ……ちょい、待って!こいつ寝かせてくるから」
もうこの時点で、さっきまでの煩悩は吹き飛び、俺のチンコが縮こまる。
慌ててベッドへ行き、葵をシーツの中へと横たえさせて、瑛斗の元へと戻って行き、手を差し伸べようとしたらピシッと払われてしまった。
参ったな……、完全に怒ってる。
まあ、この状況じゃ無理も無いけど……。
「そこ、僕たちのベッドじゃん!!!どうしてそいつを寝かせるの!!!」
そう言いながら、手に持っていた大きなケーキの箱を俺に投げつけた。
それは俺の腕に当たって床に落ち、ひっくり返った……、あーあ……、中身ぐちゃぐちゃだよな……。
「だってほら……、他に部屋無いし……」
この部屋は広いけど、ワンルームマンションなので自由にレイアウトしているが、当然ながらベッドはひとつしか無い。
「こいつが光太郎さんのとこで勝手に酒飲んじゃって、酔っ払ったんだよ……」
「それがどうして先生に関係あるの?」
もう……瑛斗くん、ゾクゾクするほど怒った顔が綺麗だよ……。
「いや……まあ……その、暗い顔して道歩いていたから飯でも奢ってやろうかと思って、光太郎さんの店に寄って食べ物注文したんだけどね……その……、待つ間に、こいつ勝手に酒飲んじゃって……」
「信じられない!今日僕と会う約束してたよね?それに友達が開いてくれるパーティーには来たくないって言うから、僕主役なのに早々に切り上げて来たんだよ?なのにどうして先生はそいつとご飯食べてんの?!」
「だから……葵とは偶然道端で会って……」
そう言いながら、側に近寄ろうとしたら怒鳴られた。
「服を着てよ!」
あ、そうだった……、瑛斗のあまりの剣幕に、まっ裸ということを忘れていた。
取り合えず、仰せの通りバスルームからタオルを持ち出し腰に巻く。
「ねぇ、もしかして3Pとかするつもりなの!!!!?」
「そんなわけ無いだろ?落ち着けってば、聞けよ話を!」
「落ち着け?こんな場面見せられて落ち着けると思うの?だいたい今日、なんの日か覚えてる?」
「当り前じゃないか!今日は瑛斗の誕生日で、一緒にお祝いしようって……」
「酷い!わかってるのに最低だよ!」
そう言うと、瑛斗はテーブルに置いてあったバカラの灰皿を、コンクリートの壁に技と投げつけた。
勿論、バカラと言えどもコンクリには勝てず、ガチャーンと大きな音を立てて割れた……。
おいおい……、それ一体いくらしたと思ってんだよ……。
「だいたい、なんでこいつが居るんだよ!しかもまっ裸で!!!」
「だから、光太郎さんは店で忙しいし、俺が連れて帰るしかなくて、玄関入るなりこいつがゲロ吐いちゃってさ、服を汚してしまったからそれで風呂に入れたんだよ」
「未成年に酒飲ますとか下心見え見えじゃん!」
「違うって!」
即座に否定したものの、ちょっと思う所の気の迷いもあったのは事実で、そのせいか若干声が上ずってしまい、それも感の良い瑛斗の激怒を助長してしまったようだ。
当然ながら、普段から喜怒哀楽の激しい瑛斗は怒り狂い、手あたり次第物を投げるので、必死で腕を掴んで身体を抱き締めた。
「放せ!!!この淫乱オヤジ!!!」
「おいおい、俺まだ24だよ?」
「オヤジじゃないかーーーっ!!!」
高校生からしたら俺も親父の部類なのか……てか、泣きじゃくる顔が愛くるしいな。
俺の腕にすっぽり収まる感じもいい……うん。
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