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誰とも……?
付き合って無いって?
まあ、そういう噂は聞くけど、じゃあいったい潤とは……、あの親密そうな関係は何だと言うのだ?
人前でキスをしたり、思わせぶりな態度を取ったり……いや、静月ならやりかねないか……。
二人が付き合って無いと聞いてホッとしたようなしないような、でも俺のこのもやもやした複雑な気分は何なのか。
静月のことが余計に分からなくなってしまった。
書斎とやらは一階にあるらしく、俺と静月はエレベータに乗り込んだ。
「俺は葵のこと好きだよ」
こいつにしては珍しく、同じセリフを二度吐いた。
お前の好きって、どの好きだよ、種類はいろいろあるだろよ、友達の好きとか、恋人の好きとか、身体が目的の好きとか……。
「一人の相手にこんなに固執したことはない」
うん、噂では『静月とは二度目は無い』だったもんな……。
身体の相性ってあるんだろう……な。
静月のエッチが上手いのか俺の感度がいいのか、エッチの最中にはまず静月を拒否れない。
とことん天まで昇りつめては、我を忘れた自分の行為を思い出しては後悔する。
俺をその気にさせる静月はすごく腹立つし嫌いだと思っていたが、今ではこいつの匂いや熱い視線は、俺の心や節操がない下半身をムズムズと揺さぶる。
静月は近寄ってくると俺の顎に手を当てた、キスをするのだろうか……、やっぱりドキドキ心臓が騒ぐ。
「葵も素直になりなよ、俺のこと好きだろ?」
「……多分、好きかも……」
「うん、知ってる」
だったら、聞くなや!
微笑んでるから、クソ腹立つ!
「死ね!」
「確認しただけ、分かってるのかと思って」
「自分の気持ちくらいわかってるわ!」
「そうかな……?」
「何だと?」
そして何故かじっと目を見つめながら、ゆっくりとキスをしてきた。
相変わらずねっとりと絡み合う舌がエロく、頭の芯までトロけさすような俺の好きな濃厚なキスだった。
「葵はさ、元々ゲイじゃないでしょ」
膝がガクガクなる手前で唇が離れて、やたら覚めた声で静月がそう言った。
「うん……?」
「俺に抱かれてアナルでイク気持ち良さを初めて知って、こんなセックス初めてで未知の世界が開けた分けでしょ?」
「まあ……そうかも」
「その素晴らしい快楽を齎したのが俺で、それで俺のことを好きだと感違いしてるのかも知れないよ?よく考えてごらんよ」
「え……」
何だって?
「感情と快楽は切り離さないとね」
「……」
ちょ……待て待て……、俺のこの感情が勘違いだと?
それは……ない……だろ。
「いや……俺は……おまえのこと……」
「そう、身体は俺に従順だ。だけど心はどうかな?本気で俺の事好きだと言える?」
そう言って、透き通るような瞳で俺を真っ直ぐ見つめるから、狼狽え怯んでしまった。
「ほら、考えているよね」
そりゃ考えるわ……、今までの俺って自分から人を好きになったことって無いような気がする、何時も誰かに声掛けられて好きになってゆくパターンだったし、恋愛ってこんなものだと思っていた……、静月に会うまでは……。
静月のセリフひとつひとつに気持ちが上がったり下がったり、このメンタルが恋愛とは別物だと言うのか?
じゃあ、このザワザワ揺れ動く心臓は何なんだ?
でも静月は頭良いから、静月に言われるとそんな気もしなくもない……。
身体が感じる好き……なのか。
俺らは急激に接近して、あっと言う間に世界観をもぶっ壊す男同士でエッチして、それがあまりの快楽で脳天までやられて、これを恋だと今まで勘違いしてたのか?
それじゃ俺……アホ過ぎね?
なんかいろいろ自分がわからなくなってきた。
「だとしても俺は葵を手放すつもりはないけどね」
静月は俺をぎゅっと抱きしめて、首筋にキスをした。
これが嫌じゃないから困る。
でも、どっちだ?
身体の好きなのか、恋愛の好きなのか……。
そしていつの間にか押されていたエレベーターの延長ボタンに触れると、微かな振動と共に動き出したのだった。
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