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あれから数日後経ったが……。 隣の席のあいつは何のアクションも無く、俺も自ら取り合うことも無かった。 当然あいつが何を考えてるかなんてさっぱり分からず、俺もまたあんなこと言われて考えてみても、結局答えは出ずにどうすることもできなくて、悶々とした日々を送っていた。 まともに恋愛したことが無い俺が、あれを恋だと勘違いしてもおかしくないと、静月に指摘されたことで変に冷静になったような気もする。 ここんとこ教室ではほぼ毎日突っ伏して寝てることが多かったが、静月から小突かれることも無くなり、全くこの前と同じ状況で野放しなのが寂しくも思えた。 俺の事好きって言ったじゃねーかよ、なんなんこの放置は……、ほんと、こいつの考えてることはわかんねーと、チラリ覗き見しても無表情な顔は真面目に前を向いて、先生の話を聞いているようだった。 昼間は優秀な優等生、夜は絶倫でエロい獣とか、相変わらず上等じゃねーかよ。 ああ……妄想が止まらない。 その日の午後、昼食終わって昼寝しようと保健室へ行ったら、長瀬が休みでドアに鍵が掛かっていた。 チッ、あのエロ教師なんで休んでんだよ? しょうがないので裏庭の木陰で寝ころんでいたら、頭上から女子の声が降って来た。 「せんぱいーっ、こんな所に居たんですか?」 目を開けると由紀ちゃんがニコニコ微笑んで俺を見下ろしていた。 相変わらず可愛いな。 「由紀ちゃんー、パンツ見えるぞ?」 「きゃ~っ、センパイったらもう!」 ふくれっ面をしつつも嬉しそうに見える由紀ちゃんは、俺の隣に腰かけて苺ミルクのパックジュースにストローを突き立てた。 「センパイにもありますよ、コーヒー飲みませんか?」 そう言って、ポケットからコーヒー缶を差し出してきた。 「お、サンキュー」 俺は起き上がってそれを受け取ると、プルトップを持ち上げた。 「由紀ちゃんがこんなとこに来るの珍しいね」 「うん、でもね今日はセンパイに教えておいた方がいいかなーって、思うことがあって」 「なに?」 「あのね、この前街で不良に絡まれた時、助けてくれたでしょ?」 「うん」 「あの時の不良に似た人たちをこの学校近くの駅で見つけたのよね、何かイチャモンつけに来たんじゃないかなーって思っちゃったの、センパイ気を付けてくださいね」 「大丈夫だよ、それにたまたま居ただけじゃね?」 「えー、だってあの制服隣町だよ?この近くに遊ぶとこも無いし、おかしくない?」 確かに、それはそうだけど由紀ちゃんの心配そうな顔を見たら安心させたくなった。 俺は昔も今も可愛い子の見方だ。 「わかった、気を付けるよ、ありがとね」 「はーい、本当に気を付けてくださいね、由紀大好きなセンパイに何かあったらって、心配してるんですから」 「うんうん」 「てー、本気にしてませんよね?」 「ん?」 「『大好きなセンパイ』って言ったんですよ?まだ有効ですよ?」 「何が?」 「もうーーっ!由紀は先輩の事今でも大好きだから、由紀のこと好きになってもまだ付き合えますよ?」 由紀ちゃんはじわりと俺の横に近づいて来た。 甘い香りがふわりと鼻をつく。 いいな女子ってホント可愛い。 「絶賛、彼氏募集中です」 そして耳元でそう囁いた。 唇から漏れた息が頬にかかる。 「近いよ由紀ちゃん、襲っちゃうぞ」 「センパイならいいですよ、由紀のこと好きにしてください」 ぐはっ、由紀ちゃん相変わらず積極的だ。 何時もはこの流れで欲望に身を任せたままエッチまで突っ走るんだが……、走っちゃおうか? この頃いろいろあり過ぎて、もう考えることがめんどくせぇわ、以前の俺に戻って由紀ちゃんとイチャイチャしようか? そしたらこのぐちゃぐちゃした分けのわからない気持ちとか、スッキリするんじゃないのかと思うし! 俺は目をゆっくり閉じかけた、由紀ちゃんの赤い唇にキスをしようと顔を近付けた……。 ーと、その時! ガツン!と、頭に拳骨が落ちて来て目の前に火花が飛んだ。 「痛って~~~っ!」 見上げると、後ろに立っていたのは将生だった。 「何をしてるのかな?」 「え……と!?」 かって見たことが無いくらい、恐ろしい顔した将生が俺を睨んでいた。 それでも、静月かと思い驚いた分、彼奴でなくて良かったとホッとしたところもあった。 「由紀ちゃんごめん、こいつに用があるんだ借りるね」 「あ……いえいえ、どうぞどうぞ……」 将生の威圧に笑顔こそ作ってはいたが、由紀ちゃんも怯えているようだった。 なので俺は将生に襟を掴まれながらズルズルと体育館裏まで連れて来られた。 「おまえ、何をしてるんだ?」 「え……と……」 「俺はおまえが静月を好きだと思ってたから身を引いたんだぞ?なのに女子に手を出すとはどういうこと?」 「んーと……」 俺が言い訳を考えようと頭を働かせていた時、将生がいきなり俺にキスをしてきた。 は? 違くね?

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