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「ま……、待て!まて!まてっ!」 俺は力を込めて無理矢理将生の身体を突き飛ばした。 「何すんだよバカ!」 突き飛ばした相手は、再び近くに寄って来ると俺の肩をがしりと掴んで真剣な顔して言った。 「葵が節操無いってのは知ってたけど、静月と付き合い始めて静月一筋だと思ってたから、俺は我慢してたんじゃねーか!なのに……、女子に手を出すくらいなら俺と遊べよ!」 「え……」 何でそうなる……。 「静月も遊び人だから葵も辛いんだろうけど、遊びたくなったら俺を利用しろよ、いや……言葉にしたら変だけど……、誰かと遊びたいのならなんで俺のとこに来ないんだ?俺はぶっちゃけ、朝も昼も夜もおまえのことで頭がいっぱいだ!好きなんだよ!死ぬほど好きだ!葵にだったら何時だって利用されてやるよ」 なんだ……? 今ちょっと心臓がぐらついたぞ。 こんだけ思われるって悪い気はしない。 それに、そうだよ俺は元々節操が無い奴で、その日の気分で誰とでも寝た……まあ、女子とだけど。 静月と言えば、俺の気持ちを拒否するようなグラつかすことばかり言って、本気で俺のこと好きとはとても思えない。 俺が静月のことを好きだとか嫌いだとかはどうでも良くて、それでも俺を放さないって言ってしまうのはやっぱ身体だけの関係でいい証拠だ。 本気って……こういうことだよな、朝から夜まで相手の事で頭がいっぱいで……、気にしてない振りしても実は凄く気になってたりして、目が合うだけでドキドキ心臓が騒ぐ。 相手を好きになるって、こんなに苦しいものなのか……? 俺今まで何やってきたんだろう……、一日が楽しければ良しとお気楽に生きてきた罰なのかこれ? 今になって好きだと自覚した相手からやんわり拒否られて、身体だけでいいとか……最悪じゃね? クソぉ……あいつ、いつかシメてやる。 ああ……もうマジでめんどくせぇ。 あいつに何時までも振り回されてるなんてごめんだ、俺は俺のやりたいようにする! うん、そうする! 俺は将生のネクタイを掴んで引き寄せると、いきなりで驚き半開きになったその唇にキスをした。 最初こそ、戸惑っていた将生だったが、開いた唇の隙間に俺が舌を突っ込むと、すぐに舌を絡めてきた。 ざらりと舌が重なり合って甘い唾液が口の中でいっぱいになる、身体に腕を回され引き寄せられると、俺も自然に将生の背中に手を置いた。 夢中でキスを繰り返す途中で、顔を離した将生が頬を赤らめたまま言った。 「葵、俺めちゃおまえのことが好きだ!」 「うん……」 知ってる。 真剣な表情に胸をくすぐられる。 俺、こいつと寝るのかな……。 がたいのいい将生に抱かれるのってどんな感じだろう、一度フェラしてくれた時はすげ気持ち良かったし、俺も将生のでかいチンコを咥えてしゃぶることができるだろうか? 男同士のセックスってそういうことだろう? あいつとはできた、将生とだってできるはずだ、勃たせることができたらそれで俺を激しくファックするのかな……、何度も何度も揺さぶられて身体中、足のつま先まで嘗め尽くして甘やかしてくれるだろう。 イッた後も大事に抱きしめてくれそうだ。 疲れ切った身体の俺を決して放置などせず、家に帰るよう急かしたりすることは絶対ないだろう。 そう思うと、頬と下半身がジンと熱くなった。 俺が言うのもなんだが、そこには愛が溢れてそうだ。 真面目な性格の将生は、俺を決して裏切らない確信がある。 これでいいんだ……、俺には俺が大好きで何時も優しい将生がいる。 落ち着くところに収まる感じがするし、それに今俺が必要とする安心感が絶大だ。 俺は再び将生の唇を奪い、舌を絡めて激しくキスをした、と同時に回された将生の腕がより力強く俺を抱きしめた。 「い~けないんだ!」 その時、どこかで声がして、俺はハッとして将生から唇を放した。 今度こそ嫌な予感がする……。 「浮気はダメだよ葵ちゃん~」 声の方を振り向くと、そこに立っていたのは啓介で、何時ものように面白がってる顔してニヤニヤ笑っていた。 アチッ……見られた。 でも浮気とかねーし、俺は誰とも付き合ってないし。 そう、言い返そうとしたら、啓介の後ろからいきなりフラリと静月が現れた。 ぐぐ……居たのか、見られたか? 見られたよな……。 でも意外にその表情は怒りも、何時もの見下したような表情でもなく、何も無い完全なる無表情だった。 それがなんだか……怖えーよ、整った顔の奴の無表情とかクール過ぎてこっちがビビってしまうじゃねーか! 前にも見たよなその顔、そしてしばらく無視したよな俺を! なん……だよ、目が合ったが静月は直ぐにヒラリと背を向け歩いて行った。 え……何か言えよ……、何時ものように激怒するとか、睨みつけるとかしないのか? 「あれ~、いいの~?凌駕、葵ちゃんを取られちゃったよ~、待てよ~」 そして、そう言いながら啓介も静月の後を追った。 終わった……と言うより、がっかりさせたのか? その時、俺はそう思った。 決定的な場面を見せられた上に、何も言わずに去って行った静月。 俺のことなどどうでもよくなったか、元々そんな気にも留めて無かったか、とにかく静月の視界から俺は外れたのだ……。 少し前、俺をシャットアウトした時と同じように、今回も完全に無視を決め込んだ静月。 なのにきっと続くだろう、心を無視した切れそうにないエンドレスな身体の関係。 将生には悪いが、俺の身体は静月仕様で……、このままだとあいつを完全に拒否れる気がしない、将生は利用しろっていうけど、それでもいいのなら静月を忘れる為、今の俺には将生のチンコが必要なのかも知れない、でもそれじゃホント俺最低な奴だよな……、マジ最低……。

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