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「俺、考えてみたけどさぁ……」
心臓が爆音たてていた。
喉が乾いて言葉が続かない……、そんな俺に静月がもっとイラッとした表情をした。
「何……?」
「え……と……」
そこからは静月の目をまともに見る勇気は無くて、足元に埋め込まれた煉瓦へ視線は落ちていた。
怯むよな……この表情、泣く子も黙らせる悪魔のような顔、怖えーわ!
「話がないのなら行くけど?」
完全に苛立っている。
「いや……待って!」
うーっ、ガン見しているだろう静月の、視線が刺さっている辺りの額が痛い。
えーーい、こうなったら言うしかない?!
だって静月、怖えーし!
「俺……、お前の事好きだ……」
はい、上等!
ついに言ってしまった!
しかも人生初告白、相手は男だけどな!
そして、勇気を絞って見上げた静月の顔は、俺をがっかりさせるには十分過ぎる程、どんな表情も浮かんでなかった。
え……。
なにか言わないのかよ?
返事くれよ。
「そう?」
……?
「そう?……て……」
そう?って何だよ!?
「じゃあ、行くよ」
あぁぁぁぁぁ?
えぇーーーっ!?
そう言うと、あっさり向きを変えて歩き出そうとしていた。
「おぃ、待ていっ!!!」
「なに?」
「何って、おまっ……言うことはそれだけなのかよ?」
静月は少し考えるようにして言った。
最低な言葉を……。
「潤を待たせてるから行くよ、相手欲しくなったら何時でも遊んでやるから連絡して」
「え……」
そう言い残して、唖然と立ちすくす俺に背を向け、玄関の方へと向かった。
な……なんだと?
それはないんじゃねーの?
あんなにしつこく俺を束縛しようとしてたのに、何だよーーーー!
お前が考えて見ろって言ったんだろーがっ!
しかも、あっと言う間にさっさと扉を開けて中へ姿を消した。
「おま……、最悪!!!死ね!誰が連絡するかよ!ばーか!!!」
頭にきた!
俺の人生初告白をすげー、迷惑そうな顔して聞きやがって!
何だよ、よく考えて見ろって言うから無い脳みそ搔き集めてずーーーっと考えてたのに、『相手欲しくなったら何時でも遊んでやるよ連絡して』だとーーっ?!
ふざけんな!
マジで怒った!
おまえには二度と関わらないわ!
マジで最低!
泣きたいというよりも、沸々と湧いてくる怒りを押さえきれずに俺は家へと戻って行った。
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