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「お前のことなんてどうでもいいし……」 そう言うのが精一杯の俺……、ああ……情けない。 「そうなの?そうは見えないんだけど?じゃあ葵は俺が誰と寝ても気にならない?」 「なるわけねーし!」 「ふーん……俺はなるよ。葵が来栖と寝てるんじゃないかと思うと気が変になりそうだ」 何を今さら言ってんだ! 「嘘つけ!てきとーなこと言いやがって」 「何が適当なんだろう?何度も俺は怪しい場面を目撃してんだけど?」 う……確かに、いろいろ見られた、体育館の倉庫での出来事や今日の昼間の激しいキス……、思い出すと頬が熱くなる。 「でもまあ、それより葵の嫉妬が俺は嬉しいよ、こうやって来てくれるとは思って無かったから」 「嫉妬とかねーわ!おい、おま……触んな!」 静月は俺の耳たぶを舐めながら、右手をシャツの中へ伸ばして俺の乳首を摘まんだ。 「やめろっつーてんだろー!てめぇ、あいつにヤらせて貰えなかったのかよ、欲求不満の捌け口に俺を使うな!」 「葵がいるのに潤と寝るわけないよ」 「え……」 「それに捌け口とか言うな、朝が来るまで何度も愛し合って捌け口なわけないでしょ」 !? 静月は顔を上げると俺を見つめて真面目な顔してそう言った、ちょっとドキドキしたじゃねーか、一瞬、信じそうになるバカな俺。 よく真顔でそんなこと言えるな? 天性のタラシだなこいつ、腹立つわーっ! と、再び怒りが湧いてくる。 しかも昼間の態度との今の違いはなんだ? おまえは二重人格者か!? いつの間にか俺の身体に跨った静月に、両手首を押さえつけられて動けないようになっていた。 そして首筋に顔を埋めてくるとキスを何度も繰り返す。 「やめろってば!マジでそんなつもりじゃないし!」 「じゃあ、どんなつもりだったの?嫉妬したんだろ?俺と潤がヤッてると思って、居てもたってもいられなかったから連絡して来たくせに」 「だーまーれー!」 「そしてここに来た。俺に会いたかったんだよね?」 そう言って、自信たっぷりに微笑んだ。 くっそぉぉぉーっ、当たってるだけに返す言葉が見つからない。 俺は顔が燃えるような気がした、絶対真っ赤になっている。 少女か! 「葵はどうしてそんなに可愛いんだろう」 俺の頬にキスをした。 「やめろ、変態!クソ野郎!」 「葵が言うと前戯のように、興奮を高めるだけだよ、可愛い唇から漏れる言葉に堪らなくそそられる」 「アホっかー……んぐ……」 途中で下りて来た唇に口を塞がれ舌を突っ込まれた。 「んっ……う……」 それはとても甘く俺を蕩けさす……、相変わらず何時ものように拒否することなどできない魔力を持っている。 もう何を言っても言い訳にしか聞こえないだろう。 実際、静月の言う通りだったからだ。 まじで俺は潤に嫉妬した。 潤と一緒に居て欲しくないし、エッチするなんて止めて欲しい。 俺の身体を撫でる静月の手が、潤の肌を撫でるところを想像し、今のように優しく微笑みかけるのかと思うと泣きそうになる。 「だけど葵は浮気者だ。またお仕置きしないとだな」 静月はそう言うなり、俺の服を乱暴に剥ぎ取った。 浮気……、将生とのキスがそう言うのならそうなのかも……、でも俺は静月と付き合っていないじゃないか。 熱が冷めたらまた後悔するかも……、でも無理だ……どんなにプライドを搔き集めても俺の身体は素直に反応する……、そんなこと思いながらも、やがて俺は静月の熱い指先と全身を舐める柔らかな舌先の誘惑に落ちていった……。

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