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あれから真田光一は俺が逃げ出さないように、放課後になると毎日廊下で見張りをしていた。 だから帰り道を失った俺は渋々委員長に付き合わされた、……いや、補習の面倒を見てくれた。 でも今の俺には数式なんかちっとも頭に入らねー……。 しかし、ここで頑張らないと落第という最も恐ろしい現実が待っているし、何より母親の顔が浮かんで、教室が水族館の水槽の中のように息苦しい。 「あ~あ、またなんかしでかしちゃったねアンタ」 頭上であずみの声がした。 将生は昼食を食べに行ったので、前の席に座ったらしいカタンと音がしたが、俺は机に突っ伏したまま顔を上げなかった。 「サンドウィッチとコーヒー買って来たよ」 「いらない……」 「撃沈かぁ……」 そう言って、あずみはケラケラ笑う。 「どうせ静月がらみだろうけどね」 再び声を上げて笑っている。 ほっとけ。 「序に静月に関してのビッグニュースを仕入れて来たけど聞く?それとも、もう知っててそんなに落ち込んでるのかな?」 静月に関しての話で俺が落ち込む? 放課後の補習も他の奴に変えてまで俺との関りを断った静月……、そんなに俺の顔を見たくないのかよ。 どこまで嫌うんだよ……。 これ以上静月に関しての下がる話を聞きたくないような……、でも聞きたいような……、うん、聞きたい……。 「なんだよ……?」 俺は顔を上げずに質問した。 「-@*|^<~:*}!」 「なに言ってんだよ!」 何を言ったか全く聞き取れなくて顔を上げたら、大きな口を開けてパンをむしゃむしゃ頬張りながら喋っているあずみがいた。 この女は全くもって色気も無いし、恥じらいってもんが無い。 だいいち、俺らを男として見てるかさえ怪しい。 「@{+*~|L*}?>……だって!」 「ふざけてんのかよ、何言ってるかわかんねーじゃないか!食いもん飲み込んでから喋れ!」 あずみは牛乳パックを手に持ち、口の中の食べ物を胃の中にゴクンと流し込んでから再び口を開いた。 「……あのさぁ……静月ね、イギリスへ留学するらしいよ」 え……。 思ってもみなかった話に俺は驚いた。 「……いつ?」 「期末テスト終わったらすぐだって」 まじか……。 「おや?知らなかったらしいね?ビッグニュースでしょ?」 あずみが俺の顔を覗き込んで反応を見ている。 流石に血の気が失せるのが自分でもわかった。 静月が……静月がイギリスに行くとか……、もう会えなくなる? 少なくともしばらくは会えないだろうな。 なぜ教えてくれなかったんだよ……。 どっちみち俺ら終わりなんじゃないか。 というより、元々イギリス行く間までの期間限定だったんじゃねーか! それに、もしかしたら例の静月の『好きな相手』もそこに居るんじゃねーのか? 結局、俺は遊ばれた? くそぉ~~、腹立つーーーーっ! 頭にきた俺は机の上に置いてあったサンドウッチの袋を開けると、口の中に放り込んだ。 うぉぉぉ……、騙されたーーっ! 俺は静月にてきとーに突き放されてフラれたわけだ? 静月のクソ野郎ーーーっ! 「お、元気出たじゃん」 「許さんあいつ!」 俺はポケットからスマホを取り出し、まだアドレス一覧に載ってた静月の名前をアドレスから消去した。 さらばだ静月、ほんとうにこれで終わりだ!

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