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「きゃぁー、お兄ちゃんどうしたのその顔!」 月曜日の朝、洗面所ですずいが俺の顔を見るなり声をあげた。 そうだよ、俺だって鏡に写った自分の酷い顔見てぎょっとしたし、口を開けると痛みが襲った。 「くそっ……」 隣の空は口に歯ブラシを突っ込んでいたので、目を丸くして少しだけ怯えるような顔で俺を見ていた。 そして、すずいがどこかに消えたと思ったらすぐに戻って来て、手にしたスマホで俺の顔をパシャリと撮った。 「何してんだよ、てめーわ」 「イケメン台無しだねお兄ちゃん、そんな顔見たことないから記念に撮っとかないと!」 そう言って、ケラケラ笑ってやがる。 あーあ……、ほんと殴られるとかありえねー、唇が切れて瘡蓋ができてるし、辺りが痣になってるじゃねーか。 「まあ、またこれで女のコの同情かっちゃってまたモテるかな」 「ゲスいよ!ほんと女子の敵だね、でもすずいが友達にはお兄ちゃんのチャラい性格バラしてるからみんな知ってるけどね」 「フン、まあいいさ中坊にモテてもしゃーないし、ガキには興味ねーよ」 それを聞いて、すずいは生意気にも舌打ちした。 「お兄ちゃん、考えてみてよ、10年後はみんなキラッキラッのOLなんだよ?みんな美人になっちゃっうよ?そんなこと言ってたら後悔するんだから!」 おー、なるほど! 「確かにな!……て、おまえダチに余計な事言いふらすんじゃねーよ!」 ごつんと頭に拳骨をお見舞いした。 「痛ったーい~~~!ママに言いつけてやるからーー!」 大げさなんだよ、だいたい軽く殴っただけだからそんな痛く無いだろうに、すずいが怒ってキッチンへと走った先には母親が居て、普段仕事で居ないことが多いから、こんな時は子犬のように纏わりついてかまってちゃんになる。 まあいいか……、日頃から俺ら呑気な兄弟を相手にしっかり者を演じるのは大変かもな。 「兄ちゃん」 「ん?」 いつの間にか歯磨き終わっていた空が、上目遣いで俺を見ながら聞いて来た。 「相手はやっつけたの?」 「あたりめーよ!いきなり殴って来やがって、わけのわかんねー因縁つけてくっから三人いたけど丸めてボコボコにしてやったわ」 「すご……兄ちゃんかっこいい!」 なんかすげーキラキラした目で俺を見上げてる。 まったく、可愛いいな空は。 「ぼくも10年たったら兄ちゃんみたいに喧嘩強くなるかな?」 「当然だろ?俺の弟だ、絶対強くなるさ、でも弱いもの虐めはすんなよ?」 「うん!ぼく、もっと大きくなったらいじめっ子をぶっとばしたいんだ!いじめなんて許せないよ」 我が弟ながらなんて純粋な奴だろう、ほっこりさせてくれる空の頭を撫でたら嬉しそうに微笑んでいた。 空の10年後……、きっとイケメンだろうな、俺より性格が男前だからモテるに違いない。 俺の10年後はいったいどうなってるんだろう。 空が言うように、誰かの役に立っているのだろうか、そして俺の隣には誰かいるのだろうか……。

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