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186 静月凌駕<SIDE>

「おおーと、さすがにそれは言えないよ~。企業秘密だからね、君は葵ちゃんが心配なら見張った方がいいよ」 啓介が間に入ってそう言った。 「なんだと……?」 「まぁまぁ、落ち着けって」 「もしかして……昨日の事もそれが関係してんのか?」 「多分」 俺がそういうと、来栖が腕を振り上げたのを啓介が素早く止めた。 「ここで静月を殴ってもどうにもなんないよ、根本を解決しないとね」 「だから根本てなんだよ!教えてくれないとわかんねーだろ、ちくしょうーっめ!葵をあんな目に合わせる為に俺は身を引いたんじゃねーぞ!」 「うん……そうだな、俺が悪い」 俺は神妙に言った。 本当に来栖のいうとおりで、俺は葵を危険に晒している。 殴られても仕方ないほどに、過去の過ちが再び俺を襲いつつあるのだ。 「ふざけんな!] 「悪いね来栖、ここはマジで頼むよー、葵ちゃんの為だ」 「勝手なこと言ってんじゃねー!あいつを危ない目に合わせたらお前らぶっ飛ばすからな!」 そう言い捨てて、来栖は教室へと戻って行った。 「あいつ、葵ちゃん守ってくれるかなー」 その後ろ姿を見送りながら、啓介が呟いた。 「大丈夫だ、あいつは葵のストーカーだからしっかり守るだろう」 啓介がクスクス笑った。 「だーね、まあ、あいつにしてみれば恋敵のお前に葵ちゃんを寝取られたばかりか、さらに葵ちゃんを守れとか言われたら腹立つわな、辛いだろうなぁ……」 ちょっとばかり神妙な顔して啓介が言った。 俺もまさかここまで本気になるとは思いもしなかった。 噂通りなら葵はノンケで女好きのチャラ男で、男なんか見向きもしなかった筈だ。 姉貴との行為の寸前で、まっ裸の葵の首根っこを押さえて自分の部屋に連れてきて、最初は冗談でビビらすだけのつもりだったのに、ベッドに横たえたら息を呑むほど綺麗な肌に苦悶の表情をした葵がとても美しくて目が離せなくなっていた。 思えばあれが始まりだったのかも知れない。 「でも凌の本気がわかるよ、だいたいお前が嫌がる相手と無理矢理やっちゃうなんて前代未聞だ」 まったくだ……、啓介の言うとおりだ。 あの時、俺は理性を飛ばして葵を無理矢理この手に抱いてしまった……。 「相手には困らないお前が、始めての奴にどんだけそそられたんだよって話」 「最初から葵は特別だったよ、ベッドへ倒した時から自分のものにしたかった」 「うへぇ、無いわ~、凌がそこまで入れ込むなんて笑える」 「どうとでも言え、とにかく葵は一瞬で俺を虜にしたんだ」 「わぉ~、凌ちゃん惚れたねぇ~、マジじゃんそれ、執着するはずだよねー」 「だから今度こそ……、あいつと決着つけないとな」 「んだね、今度こそ息の根を止めようぜ。協力するよ」 啓介はそう言って、頼もしく不敵に笑った。

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