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土曜日と言うのに、誰も捕まらなかった。
由紀ちゃんと別れて、真っ直ぐ家に帰ってきたものの、やることがない……。
母親が夜勤で居ないというのに、今日に限ってみんな予定があるとかで、誰も相手してくれない。
ああ……暇だ……。
夕食は空が近くの店で買ってきた弁当で、それを食べてからすずいは部屋へ行き、空と俺はリビングでゲームをしていた。
「兄ちゃん!凌駕兄ちゃんが新しいゲーム機を手に入れたってほんと?」
「らしいな……」
「すげぇ!さすが凌駕兄ちゃん!あれ、手に入れるの難しいんだよ?」
知ってるさ……、コネかまたは前々日に並ばないと買えないってことくらい。
「てか、なんでおまえ知ってんだよ」
「姉ちゃんに連絡来てたみたいだよ、兄ちゃんと一緒に遊びにおいでって言ってたって!いいな~、いいな~、兄ちゃんはもう遊ばせてもらった?」
「いんや」
「えー!なんで?欲しがってたじゃん、兄ちゃん、凌駕兄ちゃんとこに連れてってー!」
クソ静月、なに弟を誘惑してんだよ!
おめーわ、ショタか!
「うるせぇな、おまえ勝手に静月ん家行くとぶっ飛ばすからな!」
「ひとりでは行けないよー、だから兄ちゃん一緒に行こうよ」
「ダメだっつってんだろ!」
空はシュンとなってしまった。
わかるよそりゃ、俺だって遊びたくてしょーがねぇけど、今は静月んちに行くとか絶対ない。
俺は泣きそうな顔した空に、持っていたコントローラーを渡して言った。
「そのうち手に入ったら、おまえ先にやっていいからもう少し我慢な」
「うん……、ごめんなさい……わがまま言って……」
俺らは両親不在の時間が長く、ほぼ三人で助け合って暮らしてたから、それなりにいろいろ苦労はあった。
そのせいか、空もすずいも基本素直で我慢強く、無茶も言わない手のかからない子供だ。
長男の俺がしっかりしないといけないのに、大事な弟を悲しませてしまった。
「いや……、空は謝らなくていいよ、俺こそごめんな」
俺は空の頭を撫でた、するとニコッと可愛い笑顔が返ってきたのでちょっとホッとした。
なんでこうなるんだよ……、静月が余計な事言うから空が期待したじゃねーか、あんな泣きそうな顔させて許せねー。
部屋に戻っても何だか悶々としていた。
気晴らしにちょっとだけ……出掛けて来るかな……。
0時頃までサクッと遊んで帰ってくればいいんでないか?
もし、すずいが母親にチクったとしても、マズイ弁当に飽きて飯食いに行ってたとでも言えば、いい言い訳ができる、まあ弁当食ったけども……。
そうなると出かけるのは早かった。
妹には何時も通りちょっと出かけると言って家を出ると、電車に乗っていつものクラブに直行した。
一階のレストランに顔を出しても良かったが、土曜だし長瀬が来てるかも知れない思うと、面倒だから今日は行くのをやめた。
だいたいこんな所で教師に会うとか、テンション下がるだろう。
なので真っ直ぐ向かった地下のクラブでは、いつもの事だが土曜ということで更に盛り上がっていた。
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