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次に目が覚めたきっかけは、喉の奥で違和感があり、我慢できないほど苦しくなって口の中から何かの液体を吐き出したことによって、いきなり意識が戻った。
ゴホッ、ゲホッ、ゴホッ……、涙が出るほど苦しい。
何かを飲まされたのか、気管が痺れたような感覚があった。
重い瞼をゆっくり開けると、まず目に入ったのはチリ埃が舞うような汚いコンクリの床で、俺はそこに倒れていた……。
頭が痛いし眩暈もする、何より気分が悪くて吐きそうで、顔を上げることも起き上がることさえできなかった。
見回すと、ここは薄暗い倉庫のような広い空間で、今は使われていないのか建物の中は何もなくただっ広かった。
高い位置にある窓は、ぼんやりと明るかったが、外も見えないくらい薄汚れていて空も映していない。
天井の破れた隙間から少しだけ陽が落ちていたが、それだけじゃ今が朝か昼かはわからなかった。
気付くと、後ろの方で数人の話し声が聞こえていて、誰だか確認しようとしても身体が動かず、でも背後からだんだん近づいて来た人の気配は、その足音と同時に頭のすぐ側でピタリと止まった。
「目が覚めたようだね」
すぐ近く、頭上で声がした。
その声には聞き覚えがあって、主を確かめようと必死に頭を持ち上げようとしたら、上から靴のままコンクリートの地面に踏みつけられた。
ジャリ……と音がした。
痛てぇ……。
ギシギシ踏んでやがる……、でも身体が痺れて動けねぇ……と思ったら、どうやら両手を後ろで縛られているようだった。
なんだ、なんだ?
何がどうなってんのかまだ理解できなかった。
とにかく頭がぼーっとしていて、頭を踏みつけられているこの状況に対して理解ができてない。
「ちょっといい気になり過ぎたね、凌駕を僕から奪っておきながら無事でいられると思ったら大間違いだ」
奪うって……、静月を奪う?
え……なに言ってんの?
てか、誰だよおまえ、顔が見えないじゃねーか!
「無様だね……、僕に頭踏まれてどんな気分だろう」
この声は……。
「僕はこう見えても寛大だから、何度もチャンスをやったのに、聞かないからこんなことになるんだよ。僕のせいじゃないからね、すべて自分のせいだよ?」
笑ってやがる。
この……ちょっと嫌みな声は……。
そう……あいつだ。
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