28 / 213
第28話
え?
冷たいんじゃね?
「俺、午後は瑛斗と出掛けるからそろそろ起きてくれない?」
そういやこの前教室で約束してたな……、噂では二人は付き合ってるらしいが……。
あまり他人に興味のない俺でも、目立つ二人だから噂話は嫌でも耳に入る。
エリート官僚の瑛斗の家族はドイツに居て、静月がいるから瑛斗はひとり日本に残ったとか、殆ど静月の家で寝泊まりしてるだとか……。
だけど俺は、ここでまだ瑛斗とは鉢合わせしてない。
俺の補習期間は来ないつもりなのだろうか?
まあ、来られても困るが……、向こうも俺は邪魔だろうな……。
「ほら、早く葵」
静月は腕組みして、俺を見下ろしながら急かした。
大事な瑛斗を待たせたくないんだろ?
わかってるよ……、わかってるんだけど……さ、身体中が痛くて起き上がれないんだよ!
「身体が……動かねぇ……」
「チッ……」
え、舌打ち!?
今舌打ちしたよな?
こんにゃろ、やりたいことやったら用なしか!
やっぱムカつくわこいつ!
と、ベッドで悪態をついていたらシーツをいきなり剥がされ、まっ裸な俺は軽々と肩に抱えられるとバスルームへ直行された……と思ったら、まだ暖かい床に降ろされた。
「こっちに腰向けて」
「なんで?」
まさか、まだヤル気か?
俺の不審気な心を読み取ったかのように、静月は小馬鹿にした笑みを寄越した。
「精液出しとかないと腹痛くなるから」
そうなのか……。
まるで何も知らない俺はその後、朝方まで続けられた行為で、まだ潤っていた秘部の中を洗浄してもらい、少々の強引さでもって頭のてっぺんからつま先まで、お姫様のようにそれはそれは綺麗に静月に洗ってもらった。
その後、言われるがままに浴槽に浸かっていると、ミネラルウォーターの入った冷たいペットボトルを持ってきてくれた。
静月はいつの間にか服を着替えており、品の良さそうなオフホワイトのセーターがとても似合っている。
「悪いけど時間ないんだ、もう既に瑛斗を待たせてるし、早く出て着替えてくれる?」
苛立ったように言う。
しかも怒ったような表情はなぜ?
後悔してんのか?
一晩中付き合わされたこっちの身にもなってみやがれ、身体を動かすのもあちこち傷みに耐えてるってのに。
それに最初から俺の腕を縛り上げて、やる気まんまんだったろーがおまえ!
なのに今は俺を邪魔者扱いでさっさと放り出そうとする始末……。
ほんと最低だな!
そんなに瑛斗が大切なら浮気なんてするなよなぁーーーっ。
まてよ?
俺が浮気相手?
もしかして三角関係とかに巻き込まれたり……しないよな?
面倒はごめんだ。
特に瑛斗とはウマが合いそうにないんで、それだけは避けたかったが今更だなこれ……。
きっかけは俺が作ったかもしれないが、静月のやったことは許されねーだろ。
まあ、盛大に盛り上がったのは認めるが……。
なのにこの優しさのカケラもない態度はなんだ?
同じ相手とは寝ないってもっぱらの噂だったが、俺ともこれっきりなのだろう……。
いや、続くことは無いと断言するわ。
俺はそっちの趣味はねーんだから。
考えて見れば瑛斗がいながらいろいろな奴と浮気してるし、これで静月凌駕が想像以上のゲス野郎ってことはハッキリしたわけだ。
『静月凌駕と二度目は無い』て、誰かが言ってたのを思い出した。
ほんと、クズだこいつ。
ともだちにシェアしよう!