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「じゃあ、なんで……」
「まあ、浮気はバレるよね。分かってはいたんだけどその嫉妬さえも僕は楽しんだよ。先輩は僕にぞっこんだったから激怒しちゃってさ、当然だけど四六時中見張りを付けて自由にさせてくれなかったんだよ。あの人、不良グループのリーダーだったから、仲間に僕がどこにも行けないよう見張らせるのは簡単だし、まあ浮気がバレてもまだ僕の事を王族のように丁寧に扱ってくれてね、身体は縛られて毎日セックスを強要されたけど、僕もエッチは好きだし先輩との相性も良かったから、あえて逆らうことはやめたよ。あれ以上僕が凌駕とズルズル付き合えば凌駕に手を出しかねないし、そうなったら地獄だよね。もし凌駕に何かあったら啓介も黙ってはいないだろうし、あいつ半グレみたいな連中と仲いいからね、警察沙汰の大惨事になっちゃうよ。でもさ、それも僕を巡っての事件とか思っちゃうとゾクゾクするよね。ちょっと惜しいことしたかな」
アホ潤はマジで嬉しそうだ。
「まあ、そういうことで僕はあの人の側に居ることを選んだんだ。考えてもみなよ、何百人も束ねている総長が僕の前で家来のように跪くんだよ、こんなに気持ちいい事ってないよ」
結局は、どんな形であってもみんなを自分に従わせることが楽しいだけだろ。
クソが……。
「でもね、その先輩も悪さが過ぎて事件おこしちゃって、ほとぼり覚ます意味もあって親に無理矢理外国に留学させられちゃったんだけどね。ひとりになった僕はチャンスと思ったね。凌駕とやり直したかったんだよ。そう思って凌駕の様子を調べてたら、チャラチャラと回りをうろつくお前が目に留まり、ほんと目障りだった。僕はどんな手を使ってでも凌駕を手に入れようとした、生まれて始めて一番愛した人だからね」
一番愛した人……か……。
「ねぇ、聞いてんの?」
潤はそう言って、俺の髪の毛を掴むと後ろへ引っ張り無理矢理顔を上げさせた。
「僕は別に先輩を愛してたわけじゃない。彼の権力と僕の事を姫のように崇めてくれた態度が気に入ってただけ……セックスはそれなりに良かったけど凌駕には勝てなかったね、僕は先輩に抱かれながらも目を閉じて凌駕のことを想像したよ、身体が痙攣するほどに快楽に溺れさせてくれるセックスを……、この僕の身体に伝わる温もりは凌駕のものだって……」
……心が痛い、俺も将生にそれをしようとしたからだ。
将生の本気を自分の都合のいいように扱おうとしていたなんて酷いよな……。
なぜだか急にこいつが哀れになってきた。
要するに凌駕のことが好きだったけど、先輩に見張られてて付き合えなかったってことだろう?
こんなに堂々と俺の前で愛してると語れるほど本気だったんだろ?
あっちこっち手を出し過ぎだろうゲス静月め。
あいつにだんだん腹がたってきた。
生きて帰れたら、二、三発殴りてーっ……。
「なので、おまえが邪魔なんだよ!」
ゴキッ!
痛ってーーー!
考え事してたらいきなり左頬を殴りやがった!!
しかも拳で!
同情したらいきなりこれかよ!
前言撤回!!!
「僕から凌駕を奪ったお前を殺してやりたい!」
「待て……!何もこんなことしなくても……堂々と奪えばいいじゃんか……?犯罪だよこれ?刑務所入っちゃったら……おまえほど可愛い子ならそれこそ回されちゃうよ?」
「めでたいな!アメリカドラマの見すぎだろ。それに俺は捕まらないよ、例えおまえが死んでもね」
ハハハハハッと潤は高笑いした。
「冗談じゃねー、……死ぬつもりなんかねーし!」
「おまえの命なんか僕の気分次第なんだから!」
「怖くねーし!」
「君はわかってないね。僕はやると決めたらやるんだから」
「何をさ?……なに言ってんだ……ばーか!!」
「聞きたい?」
クソ腹立つ、上から目線で微笑んでやがる。
喋りたいんだろう?
いちいち聞くな。
「じゃあ、教えてあげる。凌駕の唯一愛した上条樹は、僕が階段の最上階から突き落としてやった」
そう言って、潤はキチガイじみた甲高い声を出しながら笑っている。
誰だよ”上条樹”って……、『凌駕の唯一愛した』?
だ……れ……?
潤は今ゾッとするような告白したのに、それよりもそのセリフが俺の心臓に突き刺さった。
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