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「ここ……」 俺は自分の唇を指さした。 顔に掛かった俺の髪の毛を優しく払いながら、ゆっくりと静月の国宝級の整った顔が近づいてくる。 ヤベェ……ドキドキする。 静月は男なのに、どうしてこんなに惹かれるんだろう。 こんなに誰かを好きになるなんて、思ってもいなかった。 「会いたかったよ……」 「俺も……」 そう言って、俺は静月の肩を手で引き寄せた。 くちゅ……ちゅ……、くちゅっ……ちゅ……。 唾液が口から溢れそうになる。 あぁ……やっぱ、静月とのキスは脳天まで痺れ、頭がふわふわする。 とろけるような優しい唇に、身体全体がぞわぞわした。 そんでもって、その濡れた舌を受け入れようと唇を開けた時、ふっと静月が身を引いた。 上半身を起こしてじっと俺を見ている。 なんだよ……、いきなり中断されて軽く怒りを覚える俺。 「酷い目にあわせてごめん……、少しでも刑を重くするために自白するまで助けに入らなかったのは事実だけど、でも、もし潤が決定的な証拠を喋らなかったとしても、あれ以上の事を葵にしようとしたらすぐ止めに入ったよ。それはわかってくれるね?」 そう言って、殴られて切れた俺の唇を指で撫でた。 わかってる。 静月はそういう奴だ、話にはちゃんと筋が通っている男だ。 そして今回のことも静月が悪いんじゃなく、俺の不注意だってこと。 ただ、昔付き合ってた奴の噂がチラついたから、嫉妬してしまったんだ。 「静月……ありがとう、助けてくれて……」 静月の左手が腹の青痣を優しく撫でるが、その暖かさが俺の身体の中の痛みを、麻酔のように無くしてくれるようだった。 やっぱ……俺は静月じゃないとだめなんだ。 そう思った瞬間、身体の中にボッと火がついたように、顔や手足、全身が一気に熱くなった。 なんだ? チンコまで反応している。 俺……おかしい。 静月の唇を見ると、もっといっぱいキスをしたくなる。 「顔が赤い……」 静月の指が俺の頬を撫でた。 「俺……変なんだ……、さっきから身体が熱い……風邪かな……」 「違う。薬がまだ切れてないんだよ」 「薬?」 「そう、葵は薬を飲まされたんだよ」 「まじか……」 これ……クスリのせいか? 身体が火照ってどうしようもない。 そういや倉庫で目覚めた時に、何か液体を無理矢理飲まされたな。 「でも……、かなり時間が経ってる……よな?」 「いや、数時間だね。まだ午後だし、それに最近の薬は持続性があるからね」 そう言って、静月が俺の腰に手で触った時、身体がビクンと反応したのを見てニヤリと笑った。 この野郎……。 「そんな目で見るんじゃない」 「え……」 「今すぐにでも抱いて欲しそうな欲情した目をしてる」 そう言いながら、ずっと俺の顔を撫でているから、シーツを掴んで我慢していた手まで震えてきた。 「触るな、俺に触るな……」 「そうなの?俺に抱いて欲しいのかと思った」 「おまえ……本当に性格……悪いよな……」 「何言ってんの、葵が苦しそうだから俺で良かったら、手助けしようかと思ったのに」 澄ました顔でそう言いながら、手で触れてくる度に俺のチンコはビンビンに張り裂けそうで、泣きたくなって再び横向き不貞寝した。 こいつマジで嫌い、俺の気持ちわかってて遊んでやがる。 枕を抱いて鬱々してたら、こめかみにキスを落とされ、今度はビクンと肩が上がる。 いちいち反応するんじゃねー、俺の身体! 「かわいい」 静月は笑いながら、頬から首へリップ音を立てながらキスは移って行った。 あぁぁぁ……、悶えそうになるのを我慢して身体全身がわなわな震える。 「うっ……、静月……てめぇ……俺を弄ぶな!それに……俺は……おまえの助けなんか……」 「そうなの?葵、俺の事嫌いになった?」 「前から、嫌いだ!ずっーーと、嫌いだーーっ!」 はっきりとそう答えたものの、耳たぶを甘噛みされて思わず声が出た。 「ひっ……ぁっ……ん……ぁぁ……っ」 「嘘つきめ」 やらしく腰を撫でるな! あぁぁぁぁ……やめろぉぉぉ……! やばい……、チンコが……痛いほどおっ勃ってるーーっ! 「久しぶりの葵の匂い……」 そう言いながら、俺の背中から腰の辺りを、わざと音をたててキスをしている。 「きっ……キスマーク、……つけん……なっ!」 「じゃあ、こっち向いて」 「いやだっ!」 「じゃあ、止めない」 静月はクスッと笑って、俺の首筋を舐めながら時々チュと優しく吸い付いた。 くぅ……っ……、やめてくれよー。

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