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「あ……っ……うっ……あぁぁ……っ」 静月の唇は首から耳へと移ると、舌が耳の中まで入ってきて敏感なところを舐めている。 俺はくすぐったいのと身体の中が異様に熱いのとで、だんだん意識が飛びそうだ。 全身が苦しい程、静月が欲しいと叫んでるが、こんなことをする前にどうしても聞きたいことがあった。 「ま……、待て……!話しを……しよう?」 俺が正面を向き直ると、静月は声をたてて笑った。 「葵、どうみたってそんな状況じゃないよね?先にフェラで抜いとこうか?」 ビンビンにおっ勃った俺の息子ちゃんを見て嬉しそうだ。 こいつ……。 「おま……え、後で……ぶっ……飛ばすかんな……!」 「どうして?一発でも抜けば少しは楽だよ」 「いっ!……嫌だってんだろ!」 覆い被さろうとして来たところ、俺は足で静月の肩を止めた。 「ああ、ごめん。そっか中に挿れて欲しいよね」 「ぶぁ……っか!てっ……てめぇ!!!」 そんな恥ずかしい事、恥ずかし気もなく言うな! でも本人は澄ました顔してるし! 「しー、静かに」 耳元で囁くようにそう言って、静月は俺の腰を掴んだ。 ……て、全く聞いて無い! 「おまえ、みんながみんなお前に服従すると思ったら大間違いだぞ!」 「服従とか……言葉悪いよね」 ゴムを指に嵌めたと思ったら、いきなり脚を持ち上げてケツに挿れてきた。 「あっ、あぁっ……くっ……」 思わず声が出た。 意識とは別に、もう、記憶が……身体が、これから起こることを考えて喜んでいる。 ヤル前から身体はトロトロで、超絶敏感になっている。 「じゃあ、虜にしよう。葵が俺から離れられなくなるよう身体を躾けないとね」 そう言いながら、指を増やした。 あっ……ひぃっ……っ……、だめだ……いろいろ、久しぶりに過去のエロい行為を思い出すと、今更ながら恥ずかしいぞ。 「や……め……っ……」 「良い子だ、誰とも浮気してないようだね」 「……知ってるくせに……、俺に見張り付けて……、送らせてただろう!」 静月は声をたてて笑った。 妹まで利用して、情報集めて俺の事を知り尽くしてるくせに……、ほんと腹立つ。 ……なんて事を考えていたら、いつの間にか更に指を増やされ、その指が俺の感じるところを押したものだから思わず声が出た。 「ぐっ……、ひゃっ……あっ……はっっ……や……っ……!」 容赦ない指は、そこばかり攻め立てる。 「はっ……、だっ……め……、くぅぅ……やめ……あぁぁぁぁ……!」 枕を握る指が震える。 片手で攻め立て、もう片方の手は俺の腰を撫でながら、喘ぐ俺の肩にキスをする。 困る……静月から離れられなくなるとか、一日中ずっと静月のことばかり考えてるとか、……苦しいだけじゃん。 「静月……ちょ……と、まって……まじ……で……」 「どうして?こっち向いて葵」 静月が指を動かすのを止めたので、身体が疼きながらも一息ついて俺は素直に顔を向けた。 「本当にやめて欲しいの?俺は葵に気持ち良くなって欲しいだけだよ」 鼻が触るくらい傍まで、ゆっくりと静月は顔を近付けて来た。 「おまえは……俺をいつも……いつも振り回してきた……」 「言ったけど、すべては葵を守るためだった。側に居て欲しかったけど、それじゃ葵が危ないので遠ざけたんだ。でも引き留めたい気持ちも当然あって、ついついちょっかい出してしまった……、葵が恋しくて俺もいろいろ葛藤はあったんだよ」 「なら、そう言えよ!わかんないから俺はお前を恨んだ!」 静月といると、なぜか素直になれない。 「言えなかった」 そう言って、急に黙ってしまった静月を見て俺はがっかりした。 結局、俺に大事な話はしてくれないってことだよな。 「俺の気持ちなんかどうでも良かったってことだろ……。おまえはいつも勝手だ」 「葵は俺を信じれないの?」 「信じられるわけないだろ!」 俺がそう言うと、静月は深くため息を吐き、そして静月は再び身体を起こした。 「わかった……」 え……、怒った? ちょっと言い過ぎたかな。 「葵が納得するまで、少し距離を置こう」 え……。 マジで悶々としてた日々は俺を振り回すおまえを恨んで、忘れようとしたこともあったけどさ、でもできなかったんだ。 そんなにあっさり静月が降参するとは思わなくて、呆然としている俺から離れて静月がベッドを降りようとしたので、俺は咄嗟に静月の手を掴んでしまった。 「ま……待って……」 振り向いた静月は、熱が冷めたような瞳で俺を見ていた。 「すげぇ……憎い……俺を振り回して……。だけど……」 言葉が出てこない……、嫌いだけど、好きで……だけど、俺が静月に望む答えをくれるだろうか? でも、ちゃんと自分の気持ちは伝えよう。 「何?」 俺を見る醒めた視線が痛い。 「俺……、静月が必要だ。だけど、でも……もう遊びの関係はいらねーから」 静月は俺の言葉にも顔色ひとつ変えず、永遠に口を閉ざしたかのように見下ろすだけだった。 そうだよな……。 なにマジになってんだよって話だ。 静月は今まで散々遊んできた奴だ、ちょっと優しくしたからって本気になられて迷惑だよな、そう思うと静月の冷たい視線に耐えられなくなった俺は、よろよろとベッドから起き上がって服を探した。 「どこ行くの?」 今度は俺の腕を取ったのは静月の方だった。 何してんだ俺たち……。 「帰る……」 「どうして?」 「俺の服は?」 「葵覚えてないの?ビリビリに裂かれててもう使えないよ、だから今取り寄せてもらってる」 「え……!」 マジか……。 「もう少しかかるよ」 ああ、やだもうマジで帰りたいのに……。 「じゃあ、洗って返すから服貸して!」 「本気で帰る気?」 「そうだよ!」 「帰さないから」 俺の腕を握った指が強くなり、真剣そうな顔を見てちょっとドキッとした……。 「そんな状態で外出たら、まるで犯してくださいって言ってるようだよ。どこかへ引っ張られ、ヤラれるのは目に見えてる。そして最悪なのは、今の状態じゃ誰にヤラれても葵は感じてしまうってこと……」 そういうことか……。 取り合えずそんな心配はしてくれるんだな、でもその顔はどう見ても怒ってるし、期待しても愛情の欠片はぜんぜん見当たらない。 考えて見れば俺はいつも静月を怒らせてるし、エッチもしないとなると愛想つかされても不思議じゃない。 そう思うと、泣きたくなってきた……。

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