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第37話
バチッ!
痛さと共に眠気が吹っ飛んだ。
『痛って~~~~!』
眠気が襲う午後一時過ぎ、机の上で頬杖ついてうつらうつらと眠気を催して来たところに、静月のデコピンが飛んで来た。
『何すんだよ!』
授業中につき小声で抗議するも、静月は冷ややかな顔をして前を顎でしゃくった。
どうやら勉強しろと言いたいらしい。
そして、再び前を向くと涼しい顔して授業を受けている。
あんなことあった後なのに、まるで何もなかったような何時もと変わらぬ態度に、こっちが戸惑い拍子抜けするような……、でもちょっと助かったような……、複雑な気分にさせられた。
俺はと言えば、あれからずっと静月の事が脳裏に浮かんで、どんな顔して月曜に会おうかと散々悩んだと言うのに、相手は呆気ないほどサッパリしていて、あの夜の出来事など微塵も気にしている様子はない……。
ああ、そうだろうよ。
あいつはただ快楽の相手を都合よく見つけたんで、遊んでみたって所なんだろうけど、俺にはかなりインパクトが強すぎて忘れようにも忘れられない。
んでもって、こうやってうだうだ考えているのだ……。
でも、忘れよう……、あれはまあ俺にとってもお遊びだ。
……そういうことにしよう……。
じゃないと毎日毎日、俺はムカツク静月のことばかり考えていて、脳内あいつの事でいっぱいだ。
それって腹立つし。
それに、こっちは散々悩んでたって言うのに、何も無かったように澄まして座ってる静月の横顔を見てたら苛々してきた。
すると、再び静月がこちらにチラリと目線を向けた。
ドキッ……!
やばい……ガン見し過ぎた。
だけど静月は何も言わず、表情も崩さず、いつもの何を考えているのか分からない、大人びた視線でじっと俺を見ていた。
さっきのように睨みつけてくるわけでもないし、何を訴えるわけでもなく……、だけどその瞳には俺がしっかり映っているようで、俺の視線をしっかり捉えて目を離す様子がない。
なんだよ……こいつ。
明るい日差しの入る教室で見る静月の瞳孔が、いつもより薄く思えた。
こんなに明るい色だったっけ……?
髪の毛もつるつると輝いているし、思ったより肌も白い……、そして滑らかなのは知っている……って、俺何考えてんだ!!!
ああ、やだやだやだ!!!
なにこの妄想!
いや、現実だったか!
俺の羞恥テンションマックスになった時、窓からの突風が教科書をパラパラ揺らして、ページを留める為に目線を離した際、静月はゆっくりと前を向いた。
静月が隣に居るのがいけないんだ、嫌でも思い出させられる。
席替えないかな……。
お前にとっても遊び、そして俺もだ……。
それでいい……。
まあ、蒸し返されても困る話だけどさ……、男心は複雑だ……。
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