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第39話

その表情から、かなり怒ってるのが見て取れた。 そうだよな……、すっぽかしたのか俺? でもおまえ、何も言って無かったじゃん……。 「振り回すとか……」 「俺の貴重な時間を使って補習してあげてんのに、先に帰るとかどういうこと?」 まあ当然だけど、静月が高圧的にそう言った。 俺が反対なら同じこと言うよな? いや、もっとキレてるに違いないけど……。 「だってお前瑛斗と話してたから……」 「だからって帰るかな?」 「あ……、いや……その……」 ごもっとも過ぎて返答に困る俺……。 「それとも、またエッチされるとか思ってんの?」 「ちげーし!!!」 何をいきなり! こんなとこでそんなこと言うな! 人が疎らに行き交う道なのに……、幸い近くには誰も居なかったが……。 「期待させて悪いけど、そんな気はサラサラ無いし」 「するかよ!」 まったく、何考えてるんだよこいつ。 「怒鳴るな」 静月は表情を変えずにじっと俺を見ていた。 「お前が変なこと言うからだろ、それにあんなことあったのに俺がのこのこ行くと思うか?」 「え、だって気持ち良かっただろ?」 そう真顔で聞く。 「おっまっ……」 グホッ! 男相手に気持ち良かったとか……、そりゃ……良かったけど……、そんなこと認められるか! それにあれは事故ったと思って忘れたいんだ俺は! 頬が熱くなるのを感じながら、鞄を静月の顔目掛けて投げたが、いとも簡単にあっさりかわされた。 「何もするわけ無いだろ?単位欲しくないのなら俺は別にいいけど?困るのは葵の方だし」 く~~~~っ! 静月は澄ました顔でそう言った。 悔しいけど行かないことには単位が貰えない……、今更教室でと言った所で外野が煩くて静月がキレるのが目に見えてるし……、そんなジレンマに苛々する。 「勉強以外何もしないからな」 「当たり前だろ?何考えてるんだよ」 「絶対だぞ!」 「しつこいなぁ、わかってるってば」 そう言って、静月は俺をジロリと睨んだ。 それはよく教室で見せる、頭の良い人間が成績最下部の奴を見下すような目線だった。 ほんとムカツク……、一瞬でもこいつの事をかっこいいとか思った自分が愚かすぎる。 俺は今日の夕食が少し遅れるとすずいにラインを打ちながら、もう既に3メートルほど先を歩く静月の後頭部を見つめながら悪態を吐いた……。

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