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第40話
「お ま えーーーーーっ!!」
俺は今、背後で閉まった部屋のドアに張り付けられて、静月のキス攻撃を受けていた。
二人きりになるなりこれだ。
嘘つきは泥棒の始まりなんだぞ静月!
「わかってるって言ったよな? わかってるって!!!」
俺は必死に静月の唇から逃れようとしていた。
顔を背けると頬に静月の睫毛が揺れて、滑らかな髪の毛が触れた。
身体が密着して身動きも取れない。
意図してるのかしてないのか、下半身もハグしているし……。
「あの時はね、でも今は葵にキスしたい」
そう言いいながら、無理矢理俺の顎を掴んで正面を向けようとする。
「やめろっつったら!」
少しでも口を開けば舌を入れられる始末……、うぐぐ……。
クチュリ……と嫌らしい音がした。
決して誘いに乗らないと決めてても、口内弄られ思わず舌で押し返そうとすると、それをまんまと絡められる。
だがだめだこのままじゃ、この前と同じくズルズルなし崩しの予感が……。
母親とも約束したし、門限を破るわけにはいかない、ここはきっぱりそんな気は無いと伝えなければ……。
俺は力を振り絞り、圧し掛かって来る静月の身体を押し戻した。
「俺はマジで勉強しに来てるんだ、それ以外は無いんだよ、お前がその気だったら他の奴を誘え!」
静月は無表情で俺を見ていたが、ちゃんと意見は言えた……と、思う……。
すると、どうだろう……。
「いいよ」
!
そう言って、拍子抜けするほど意外にも静月はあっさり身を引いた。
なんだよ……、調子狂うなぁ……。
寧ろ俺をからかって遊んでんじゃないかと思えた……。
いや、そうなんだろう……。
じゃないと、この前のように静月に本気で押し切られると、拒絶する自信が無いのも怖いけど……。
悔しいが、それ程にこの前の経験は強烈で、静月は俺をあっさり崩せることを知っているように思えた。
そして、それは少しばかり俺の自尊心を傷つけた。
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