40 / 213

第40話

「お ま えーーーーーっ!!」 俺は今、背後で閉まった部屋のドアに張り付けられて、静月のキス攻撃を受けていた。 二人きりになるなりこれだ。 嘘つきは泥棒の始まりなんだぞ静月! 「わかってるって言ったよな? わかってるって!!!」 俺は必死に静月の唇から逃れようとしていた。 顔を背けると頬に静月の睫毛が揺れて、滑らかな髪の毛が触れた。 身体が密着して身動きも取れない。 意図してるのかしてないのか、下半身もハグしているし……。 「あの時はね、でも今は葵にキスしたい」 そう言いいながら、無理矢理俺の顎を掴んで正面を向けようとする。 「やめろっつったら!」 少しでも口を開けば舌を入れられる始末……、うぐぐ……。 クチュリ……と嫌らしい音がした。 決して誘いに乗らないと決めてても、口内弄られ思わず舌で押し返そうとすると、それをまんまと絡められる。 だがだめだこのままじゃ、この前と同じくズルズルなし崩しの予感が……。 母親とも約束したし、門限を破るわけにはいかない、ここはきっぱりそんな気は無いと伝えなければ……。 俺は力を振り絞り、圧し掛かって来る静月の身体を押し戻した。 「俺はマジで勉強しに来てるんだ、それ以外は無いんだよ、お前がその気だったら他の奴を誘え!」 静月は無表情で俺を見ていたが、ちゃんと意見は言えた……と、思う……。 すると、どうだろう……。 「いいよ」 ! そう言って、拍子抜けするほど意外にも静月はあっさり身を引いた。 なんだよ……、調子狂うなぁ……。 寧ろ俺をからかって遊んでんじゃないかと思えた……。 いや、そうなんだろう……。 じゃないと、この前のように静月に本気で押し切られると、拒絶する自信が無いのも怖いけど……。 悔しいが、それ程にこの前の経験は強烈で、静月は俺をあっさり崩せることを知っているように思えた。 そして、それは少しばかり俺の自尊心を傷つけた。

ともだちにシェアしよう!