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第41話

「そこ違う」 ゴツン! 俺の頭が小突かれる音だ。 「痛ってーわ!」 静月に文句を言いつつ、涙目になりながら頭を撫でる俺……。 爽やかイケメンの見た目とは裏腹に、ほんと暴力的なんだからコイツ……。 「さっき教えたよね?ちゃんと覚えていて、こことここが……」 あれから数時間、煩悩を無理矢理振り払い、勉強に集中した結果、俺の脳内キャパが限界を超えていた。 ご苦労なことに、意外にも真面目な顔した静月が俺の教科書を覗き込みながら、数学の数式を再び丁寧に説明し始めた。 その距離からいつもつけている香水が風に乗って漂い、土曜に抱き合った肌の温もりを思い起こさせた。 エッチの最中は人が変わったように激しく俺を惑わすが、終わった後は蕩けるようなキスを繰り返す甘い時間を楽しむ所もある。 夜中は執拗に行為を求めて、くたくたになるほど体力の限界まで何度も身体を重ねながら、抱きしめたまま何時までも抜こうとしない変な執着を見せたが、すっかり太陽が昇る頃には人が変わったように淡白な面を見せる。 それが二面性を持つ静月の、学校での恐ろしく澄ました優等生の顔とダブった。 「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」 冷ややかな声に妄想から呼び戻される。 「もう疲れた……、こんな時間だし終わりにしようぜ……」 ペンを投げた俺を静月はジロリと見たが、時間の経過に気づいてるのか特に何も言わなかった。 その時、ノックの音がしてドアが開くと、そこに洒落た私服に着替えた瑛斗が現れた。 「あ、悪い~、勉強中だった?」 言葉ほど1ミリも悪いと思ってなさそうな瑛斗は、ニコリと嘘くさい笑みを零しながらそう言った。 こいつはいつも飄々としてるが、癖のある性格が時折覗く。 まあ隠すつもりも無さそうだけど。 「今おわったとこ」 静月が渋々教科書を閉じてそう言った。 「本当に真面目に勉強してたんだ~」 それを見ていた瑛斗が笑いながらそう言い、冷蔵庫へと向かうと勝手にペットボトルの水を取り出し、キャップを開けながらやって来ると静月の隣に腰掛けた。 勝手知ったる……て、とこか……。 「ほかに何するんだよ」 「えー、イケナイこと?とか?」 「ばか」 静月は瑛斗を見て、柔らかく微笑んだ。

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