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第44話

てな事で、昼飯を食った後、俺は保険室に向かった。 ガラッとドアを開ければ、机の上で何やら書物をしていた長瀬ちゃんがいた。 顔を上げて俺を見る。 長瀬香、二十四歳、独身、身長181センチ、体重は……知らね。 背が高いが白衣が似合わないのは、長めの髪がホストでも十分イケる整った顔を引き立てているからで、どう見ても堅気には見えない派手な容姿が災いしている。 「ベッドは空いてないよー」 「ウソばっか~~、ほらー開いてるじゃん!」 俺は閉められていたカーテンを開けて中を確認し、その簡素なベッドの上に背中からダイブした。 「これこれ~、午後は昼寝に限る~」 長瀬が背伸びする俺を腕組みしながら、呆れた顔で見下ろしている。 「サボる奴のベッドはないぞ」 「お堅いこと言うなよ長瀬ちゃん、俺らの仲じゃん」 「俺らの仲ってなんだよ」 「長瀬ちゃんたらーっ、シンちゃんちのラウンジで男物色してんの知ってんだよー?」 「おまえなぁ、シンは大学の同級生だって言っただろが、それに物色してるんじゃなくてあそこで飯食べて帰ってるの、俺一人暮らしだからね」 「連れ込み放題じゃん~羨ましい!俺なんか連れ込んでも声漏れが気になって集中できないわ」 「お前な、人の話聞いてた?」 長瀬はため息を吐いた。 「長瀬ちゃん恋人いねーの?」 「特定の人はいないな、なに?なってくれるのかい?」 長瀬は俺の左耳の横に手をついて、微笑みながら顔を覗き込んできた。 「顔が近いんだけどー?」 よく見ると、いやよく見なくても女子が騒ぐだけのことがある、なかなかの美形である。 「だからー、言ってるだろ。俺はそんな趣味は無いって」 「そうかなー?お前はこっち側の人間だって俺は思うけどな……」 知った風に長瀬はニヤリと笑ってみせた。 「アホなこと言ってんじゃねーよ」 「だってお前あんまり嫌がら無いじゃん、こんなことしても……」 そう言って、長瀬は俺の頬に手を当てて親指で優しく撫でた。 ……いや、寝床の確保に少々の痛手は覚悟してるが、ここは嫌がるべきなのか……。 長瀬ちゃんとはもう長い付き合いになるから、こういったセクハラは慣れてるし。 でも……、そう……なのか……?

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