45 / 213

第45話

俺は長瀬ちゃんの言うようにそっち側の人間なのか? だから静月とあんなことできたのだろうか? いや、あれは強制だったぞ? そうだ!そうだ! でも……、静月に触られて、そんなに嫌じゃなかったっけ……。 それにそもそも本気で拒否しただろうか……。 いや、したぞ? 最初はな……。 まあ、すぐに落とされたけどな……。 静月との濃厚なキスが、脳裏をフラッシュバックした。 「ほら……、思い当たるんだろう?」 ハッ! 「ま……まさか!」 いけね、思い出しちまった。 静月とのキスを……。 「何顔を赤くして動揺してんだよ、なにかあったな葵」 そう言って長瀬はにやりと笑った。 「なにもねーし!」 「じゃ、俺と試してみる?手取り足取り伝授するよ、いや、もう知ってるか?」 長瀬は微笑みながら俺の両手を取ると、頭上に張り付けた。 半分本気で半分冗談なのは分かっていた。 長瀬はバイだ。 公言もしないが隠しもしてなく、こうやってベッドを占領するやからに、お仕置きのように牙を向ける。 まあ猫のように可愛い牙だけど……。 だから俺は長瀬とキスしたらこの前感じた静月の時のような、ドキドキして目眩がするような気分を再び味わえるのか、試してみたいと思う気持ちもチラホラ……。 俺は本当はこっち側の人間なのか? 決めかねていたら、それを無視した長瀬の唇が降りて来た……。 長瀬とのキスはどんなだろう……。 俺は思わず目を閉じる……。  と、その時、シャーーーと音を立てて勢いよくカーテンが開かれた。 え! そこに居たのは……静月だった……。

ともだちにシェアしよう!