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第46話

明らかに誤解を受けてもしょうがない雰囲気なのに、静月は顔色ひとつ変えずにベッドまで近寄って来ると、俺の手を思いっきり引っ張って起き上がらせ、長瀬の方を振り向いて言った。 「先生、こいつ仮病ですから連れて返ります」 「そうだね、さっさと連れてってくれ」 長瀬は余裕で笑ってそう言った。 うわぁ、その笑顔ムカツク! 完全に俺をからかって楽しんだような顔してた。 おまけに俺らに向かって早く出ていけと手を振る始末。 くそぉー! どいつもこいつもこの頃ムカつく! 俺はそのまま腕を掴まれ廊下に連れ出されると、ズルズルと階段を駆け上って行くが、自分達の教室は二階なので疑問に思い尋ねてみたけど、静月は無言のままでとうとう屋上の入口まで来てしまった。 ここは通常鍵が掛かっていて外に出ることはできない……筈なのに! ガチャッ……。 ……!? 鍵持ってるし、こいつ……。 「ほら、出て」 「なんで鍵持ってるのさ……」 質問を無視した不機嫌そうな静月に、俺は後ろから屋上へと付き飛ばされた。 うぉう……、乱暴な扱いはやめろや! つんのめりながら屋上に出た俺は、全方向に広がるパノラマの壮大さに息を呑んだ……。 「すっげ……ぇ……」 フェンスがあるものの視界を遮る物が無い屋上は、近くに高い建物が無いせいで青い空が見渡せた。 通り過ぎてゆくそよ風が心地よかった。 さっきまでの不満は一気にどこかへ飛んで行っていた。 「気持ちいいなここ」 俺はフェンスに凭れながら、眩しいほど青い空を見上げていた。 そんな俺を見る静月は、相変わらずの無表情だったけど……。 「何ここ、それにどうして鍵を持ってんだよ、ここ立ち入り禁止じゃん」 「俺にできないことがあるとでも?」 真顔でそう言う。 はいはい、そうでしょうよ。 きっと悪戯な先輩から譲り受けでもしたんだろうよ。

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