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第48話

それにしてもなんて眺めだ、街が一望できる。 「あ、静月ん家が見えるじゃん」 「ん」 高い木に囲まれて、まるで公園のような広い敷地の中に聳え立つ、大きな建物があった。 「でかすぎー、城かよ」 「小さいよ、庭にプールも無いしね」 「どこの王子だよ!もう口開くな、嫌みにしか聞こえねーから」 静月は眩しそうに眼を細めながら、でも微笑みを浮かべて俺を見ていた。 最も日光が似合わなそうなのに、なぜかこの青空の下の静月は輝いて見えた。 「お前不思議な奴だな……」 俺がポツリとそう言うと、静月は意外そうな顔をして言った。 「お前に言われるとは」 「なんでさ、俺は至って普通だけど?」 「教師とキスするのが?」 「え?」 このタイミングで話をぶり返されてギョっとなる。 見てたよな……、見てたよなコイツ……、すげぇタイミングでカーテン開けたもんな……。 「ちげーよ……」 「何が?キスするのが?」 真顔で聞くな! 「長瀬と……その……キスとか……」 責められてんのか俺? そんな謂れは無いぞ! 「葵って実はゲイなの?」 静月が意地悪そうに尋ねた。 「おま……!んなわけねーだろ!俺はカワイ子ちゃんが好きだし!」 「なのに長瀬とはキスするんだ?」 「キスなんて、挨拶みたいなものじゃないか」 いや違うよな、違うけど……、俺のちょっと恥ずかしい下心を見透かされたようで、ついムキになってしまったが、そんなことを言わせる静月に腹が立った。 「ふ~ん、あれは挨拶だったんだ」 静月らしい嫌味な言い方で攻めてくる。 こいつ嫌い……。

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