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ハッ!
ダメだダメだ、何やってんだ俺!
完全に毒されているぞ。
これ以上流されないようにと、俺はどこか頭の隅っこにあった理性と言うものを搔き集めて、必死で静月の胸に手を当て押しのけた。
「やめろや!」
静月は特に驚いた風もなく、微笑みながらあっさり身を引いた。
「挨拶だよ、平気でしょ?」
「ぶ……ぶあっか!!死ね!クソが!」
「葵さぁ、俺とのキス嫌いじゃないでしょ?」
ギョッ!!!
ばれてらー……。
「俺も嫌いじゃないよ」
ドクン……、そんな事言うなし……心臓が跳ねたじゃねーか。
静月はそんな俺の心を見透かしたように、再び顔を近づけて来る……。
吸い込まれそうな綺麗な瞳に俺が写っていた。
黙っていれば見てくれはおとぎの国の王子……。
綺麗な女子は好きだけども、綺麗な男子も……拒否できないみたいだ……。
手を頬に添えられ、鼻先が掠めた。
「もう……お仕置き終わっただろ……」
「まだだよ」
静月の親指が俺の唇を撫でた。
唇の辺りを彷徨う、何かを欲するような熱い視線が俺の芯を疼かせる。
「あれで終わったと思ってんの……?」
「何言って……」
言葉を遮るように再び静月に唇を食まれた……。
「ん……ぅ……」
思わず声が漏れて、恥ずかしさに頬が紅潮するのを感じた。
ほんと何やってんだろ……。
拒否しなければと分かってはいるが、できないもどかしさ……。
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