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クシュン……。 太陽がかなり傾き、そよ風が身体に纏わりついたら、肌寒い時刻になっていた。 寒さに身震いしながら起き上がって、周りを見渡しても誰も居なかった……。 おおおおおぃ!!!! 静月はどこだ! 俺をこんな寒空に一人残しやがって、あんまりじゃないか! だいたい何時だよ、かなり陽が傾いているし、遠くに校門をくぐる下校途中の生徒が見えた。 「やっべ!」 俺いったい何時間寝てたんだよ、第一あいつはどうした? 俺を残して出て行ったのか? 怒りが収まらず立ち上がろうとして、手元にキーが置手紙と共に置いてあることに気が付いた。 『鍵を閉めたら持って来い』 …………。 はぁぁぁ? 優しいんだか横暴なんだか……、だからってひとり置いて行くなよ! ガランとただっ広い誰も居ない屋上で、無性に寂しくなって、俺はいそいそと鍵を掛けて階段を下りて来た。 廊下は人影もまばらで、教室に戻っても誰も居なかった。 「うはっ……何だよ、誰も居ないのかよ。てか俺スマホどこいった?」 ガサゴソと机の中を漁ると教科書の下から、ラインや通話の着信履歴がたんまり残ったスマホが出て来た。 命の次に俺の人生に置いて大事なツールを、こんなとこに放置するなんて何たる不覚。 つか、きっと大河に将生やあずみ、俺を探しただろうな……。 ショボーーーンとした心を抱えながら教室を出て、トボトボと校門をくぐる途中でラインの着信が鳴った。 静月だ、この野郎! 『鍵、家まで持って来い』 はぁ??? 何言ってんのコイツ! 無視、無視、わざわざ行けるか! ……と、思ってポケットに放り込んだら再び着信が鳴った。 『でないと、補習のサインあげないよ』 なんだとー!? ざけんな! てか、補習する気か? 無視すると怒って絡んでくるしな……、それも面倒だ。 こんな時刻だし、まあ今日は食事の当番じゃ無いから急いで帰る理由は無いけど……。 鍵を持ってることであいつにとやかく言われたくも無いし、帰り道だから執事さんに渡してさっさと帰って来よう。 そうしよう。 それに、瑛斗が来てるかもだし……。 そんな事をぼんやり考えていいたら、あっと言う間に静月邸に着いてしまった。 『どちら様でしょうか』 インターホンを押すと、何時ぞやの温厚そうな執事さんの声がした。 「すみません高野と言いますが……」 『お伺いしております』 そして、いきなりガチャリと門が開いた。 遠いんだよ玄関まで、俺はてくてく歩いて行くとゆっくり玄関の扉が開くのが見えた。 この前の初老の執事がにこやかに出迎えてくれる。 「いらっしゃいませ高野様、お坊ちゃまがお部屋でお待ちかねです」 いやいや、そうじゃなくて……。 「あー、いや……あの……この鍵を渡して貰えませんか?用事はそれだけなんです……」 「坊ちゃまから私どもが鍵を預からないようにとの仰せでして、ぜひお会いになって直接お渡し下さい。さあ、どうぞこちらへ」 「えと……」 執事さんは笑みを絶やさず俺をエレベーターの前へと誘導し、ボタンを押してくれた。 「いや……渡して貰えると……」 助かるんだが……、でもその先を言わせない頑なさを漂わせて、執事さんは俺なんかに笑みを浮かべて頭を下げた。 「おひとりでとの事なので、私はここで失礼します」 「あ……、ありがとうございます」 同じく俺もぺこりと頭を下げた。 全く……、必要時以外行きたくないのにまた部屋に行く羽目に…………。 おいこら自分、しっかりしろよ。 でないと俺の狼狽を見て、楽しむ静月をつけ上がらせるだけだ。 何だかいろいろムカツク……、俺は怒りを胸に秘めて静月の部屋のドアをノックした。 返事が無い……。 来いと言うのだから絶対中に居るはずだ。 俺はそっと扉を開ける。 案の定、中に居てソファに腰かけスマホをいじっていた。 無視かよ……。 「居るじゃん、返事しろよテメー!」

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