53 / 213

53

俺はムカつきながら部屋の中にドカドカ入って行くと、静月の目の前にあるガラスのテーブルの上に、鍵をガチャリと乱暴に置いた。 それでもこいつは反応せずに顔も上げやしない。 「なんで起こしてくれなかったんだよ、こんなとこまで持ってくる羽目になったじゃねーか!ラインで呼びつけやがって、一体何様だってんだボケッ!」 俺が余りにもぎゃあぎゃあ喚いたからか、漸く顔を上げた静月はこっちを向いて冷静に言った。 「起こしたけど起きなかったくせに」 「え……」 ……う……。 「何度も起こしたけど?」 不快そうな表情をして静月が俺を見た。 む……ぁ……、俺は確かに一旦眠りにつくと寝起きが悪い……。 一応、起こしてはくれたのか……、でも……、それでもそのまま放置は無いだろ! と、脳内で怒りが再び沸々湧いて来た。 「と……、とにかく……、返したからな!」 そう言い放って、すぐドアへ向かったが、後ろからゲスい言葉を投げてきた。 「あれ?ヤリに来たんじゃないの?」 はぁぁぁぁぁ? 思わず振り向いてしまった。 今、何て言った? 聞き間違いか? 「あぁ?アホか?惚けたこと言ってんじゃねーよ!」 憎たらしいことに、静月は馬鹿にしたように微笑んでいた。 「てめぇが持って来いって言ったんだろうが!」 「にしても、のこのこ来るとはね」 静月はスマホを傍らに投げると、腕組みをして偉そうに俺を見ていた。 ムカツクー!! なんかそんな気もないのに、そういう風に思われてたかと思うとめちゃくちゃ腹が立った。 「死ね!」 俺は捨て台詞を残して、再び静月に背を向けドアに向かう。 そして、ドアノブに手を出した途端、後ろからヘッドロックされた。 ぐはっ! ……く……苦しい……! そしてそのままズルズル部屋の中へ連れ戻されると、身体ごと抱えられてベッドへ放り投げられた。

ともだちにシェアしよう!