54 / 213
54
うぉぉぉい!
「何すんだよ!クソ野郎!」
そして、俺が逃げられないよう馬乗りになって来た。
「葵って、ほんと言葉使い悪いよね」
「今、それ関係あるかよ?どきやがれ」
俺の身体にのしかかる静月を跳ね退けようとしても、手首を掴まれる始末で……、俺が非力なのかこいつの力が強いのか分からなかったが、ジムで鍛えてると噂の身体は、確かに腹筋が綺麗に割れていて、男の俺が見ても美しかったよな……。
いやいや、今それどころじゃ無いだろ俺!
「急いで帰ること無いだろう?」
「何言ってやがるこのゲス野郎!」
「そのゲス野郎にイカせられて、あんあん喘いでいたのは誰だっけ?」
ぐはぁ、それ言うなし!
顔が赤くなるのが分かった。
「あんな事されて……、感じない奴がいたら不思議だわ」
「うん、感じてたよね?」
ごふっ!
そういう事言うな!
静月はにっこり微笑んで顔を近づけて来ると、咄嗟に横を向いた俺の耳たぶを甘噛みした。
「う……ぁ……っ」
思わず声が出て、身体がぷるると身震いした。
やめろや、そこ!
俺の敏感なところ!
殺すぞこらぁ!
「この……どアホが……!」
「葵って全身性感帯だよな、どこ舐めても感じるよね?」
反論のしようがない……、確かに特に首筋とか弱くて、美容院で触られると身体がふるふるするから、めちゃ恥ずかしい。
なのにさっきから首の辺りを静月が舐める度に、身体が素直にピクリと反応して、歯痒さに泣きたいほど悔しい……。
「ざけんな、てめぇ!」
俺は静月の制服を掴んで重い身体をどかそうとしたが、その手をあっさり躱されて、この頃よくあるシチュエーションの、両手を頭上に張り付けられた……。
そんな非力な自分が情けなく、腹が立ってさらに抵抗を試みるが、揉み合ううちに静月の唇が俺の頬を掠め、鼻先が擦れた……。
「暴れないで葵」
その強硬な態度とは裏腹な、優しい声して耳元で囁くから、俺の動きが止まり、一瞬目が合った。
さっきまでのどこか嘲りを含んだ瞳では無く、熱を秘めたような目で至近距離から俺を見下していた。
でも、今日の俺は怒ってんだ。
もうお前とは二度と絡まない。
瑛斗とのこともあるし、後々、面倒なことになりかねないからだ。
俺は力を振り絞り、静月を突き飛ばして起き上がろうとしたが、物凄い勢いで腕を掴まれベッドへ連れ戻されると、どこから出してきたのか手錠がいきなり嵌められた。
ガチャッ!!!
え……。
ともだちにシェアしよう!