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当然の如く、俺が静月の家に泊ったと言う話はあっという間に広まり、たった一日の事なのに噂が噂を呼んでいた。 概ね『補習を早く終わらせたかったから』で通ったが、腐女子の間から二人は付き合ってるだとか、希望観測的なデマが拡散され、俺らが教室を移動する度キャーキャーと気勢が漏れた。 元々、騒がれるのは嫌じゃない俺だけど、好奇な視線が気にならないと言えば嘘になるかも知れない。 噂の相手は静月だし……。 何にしろ、エッチしたことがバレるのは絶対に避けたいので、静月によって木っ端微塵に壊されたプライドを搔き集めて、平静を装い自然に振る舞うことにした。 「まあ、静月ん家の前にはファンが張り込んでるし、バレるよねー」 昼食時、サンドウィッチを頬張りながらあずみが可笑しそうに言った。 大河と将生も飯を食いながらニヤニヤした顔で話を聞いている。 「バレるとか、なんだよ、ただ補習してて遅くなったから泊っただけじゃん……」 「いやぁ~あたしは、あんたがホモでも気にしないよ?」 ゲホッ! 俺は食べかけのパスタに咽た。 動揺を悟られないよう水を飲んで誤魔化す。 「アホッかぁ!ないわ!ナイナイ!」 「何焦ってんのよ、余計怪しいから。まあ、あんたが生粋の女子好きってことは知ってるけども」 「だろ?」 ふぅ~。 実績あって良かったわ、でないとヤバイヤバイ、まさか俺が静月とどうのこうのって……、言えるわけがねぇぇぇぇ! バレたかと思ってヒヤヒヤしたぜ。 「でもねぇ、この頃のあんたと静月ってなんだか仲いいんだもん、腐女子でないけど疑っちゃうよね」 「やめろや!」 どこをどう見たらそう思うのだ? 何時、仲良くしたよ? 大抵は俺があいつを睨んでると思うけど……、腹立つから……。 「ラブ男でいいじゃん」 クスリと笑う。 「どーゆー意味だよ」 「ラブラブしてる男子」 「誰がラブラブしてるよ?」 見当違いが甚だしくて腹が立つわー。 「あんたと静月」 「ざけんなおまえ、アイツと俺は犬猿の仲だし」 「えー、似合ってるのに」 「あほか、補修ではいつも小突かれてるし、あー見えてあいつ意外と力あるんだわ、痛てーのなんのって」 俺が顔を顰めるとみんなが笑った。 静月の補習時の鬼畜ぶりは半端ない、それに全てがあいつの意のままで俺は振り回されっ放しだ。 いい加減ムカついてんのに仲が良いだと? 笑える……。 「何れにせよ、あたしはあんたがどういう嗜好の持ち主であれ味方だよ?」 そう言って、再びアハハと笑う。 面白がってんなあずみ……。 「嗜好って……いやらしいなあずみは」 「何考えてんのよハゲ!」 俺がニヤニヤと笑うと、テーブルの下で向う脛を蹴られた。 「痛ってぇ~」 まあ、あずみはそうだろうな、そういうマイノリティーを差別するような肝の小さな奴ではないことを俺は知っている。 嫌なことは嫌だとはっきり言うし、俺がへこむような事も平気で言ってくるが、男勝りのサッパリした性格で裏表が無く、変に気を使われるより一緒に居てずっと楽しい。 何より、俺はあずみにとって恋愛対象じゃないのがシャクに触るような、安心できるような、男女の枠を超えて長年友達をやってられる秘訣なのかも知れない。 「最近こいつ、付き合い悪いしな」   将生が会話に割って入る。 「よく言うぜ、こっちのセリフだし、お前サッカーの練習忙しくて遊びに行く暇ないじゃん」 「推薦枠は辛いんだよ、ある程度真面目にやんないとな~」 「将来有望選手!がんばー」 俺がそう言うと、将生はため息を吐きながら、カレーライスを頬張った。 「今のうちにサインいっぱい貰っとくか、有名になったらそれ売る為にな」 「おうよ大河、飾っとけよ、そのうち高い金額で売れるからな」 将来について軽口を叩くと途端に機嫌が良くなる将生は、何れ本当に有名になって世界を股にかけて活躍するかも知れなかった。 なのに呑気にカレーを食ってる姿はどこにでもいる高校生で屈託がない。 「葵、じゃあ今度映画にでも付き合えよ」 「おう」 「なんで俺らをハブるかなぁ?」 大河があずみに相槌を求めながら不満を零した。 「お前はいつも女子と遊びに行くから俺らひとりもんは取り合ってくんないじゃん、あずみは姉ちゃんとこでバイトしてて忙しそうだし」 「大河はそうよね、いつも休みの日は誰かとデートしてる」 あずみはクスリと笑った。 心当たりがある大河もニヤニヤ笑っている。 「だろ?」 「まあ、私も休日はスタイリストのお姉ちゃんに付いてバイトしてるからね、将生達とは映画行きたいんだけど、実際行く暇が無いのよね」 「姉ちゃん有名人とかにも会うんだよな?アイドルや美人モデル!いいなぁ、うひょー会いてぇー」 そう言いながら、大河と将生が目を輝かせている。 「ダメよ、あんた達は連れてかないからね」 下心を見透かされて、ぐはははっと、大河と将生から笑いが漏れた。 「ほんと、バカよねぇあんた達」 あずみは呆れたように腕組みをして俺らを見ていた。 男ってほんとバカなのかも知れません……まじで。

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