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五時限目の教室移動の際、後ろから静月に呼び止められた。 「おん?」 「今日来るよね?」 「え……」 うーむ……、身体が怠いし、できれば今日は勘弁して欲しい……。 いや、勉強の方な……。 どっちの返答をしても怒られそうなのでテキトーな言葉を探していたら、顎をがしりと掴まれた。 「行くと言えば?」 強制させられると反発心が湧くのは常で……。 「行かない」と、答えてしまう。 「ふーん、そんな事言っていいの?」 そう言って、静月が目を細めた為、俺は嫌な予感がした。 「……?」 静月はポケットからスマホを取り出すと、例の動画を俺に見せた。 『あっ……ん、い……いく……うっ……あっ……』 それは、激しく俺が快楽にのた打ち回っている動画で……。 うぉぉぉい! 「やめい!!!!」 俺は動揺しながらスマホを取り上げようと手を出したが、静月はさっとポケットに入れてしまった。 最悪……。 こいつこれからずっとこうやって俺を脅迫するのだろうかと思うと、血の気が失せる思いだった。 死ね! 静月! 「来るよね?」 「ほんと最低だなおまえ……」 「無償で勉強教えてる俺に向かってそれは無いでしょ?それに俺もさっさと補習終わらせたいし、勉強しないつもり?」 え? そっちーーーぃぃぃ? 「顔赤くして、何考えてんの?」 「いや……なにも」 何見せてんだよ、勘違いちちゃったじゃねーか……、まじ恥ずいわ……。 しかし、ほんとに補習で終わるのだろうか……。 「でも、葵がそっちの補習がいいのなら、俺に抱かれる度にサインしてあげるよ?」 耳元で、わざと息を吹きかけながらそう囁いた。 出たよ、王子からゲッすい言葉が……。 「ば……ばっか、おまえーーーーっ!!!」 学校でそんなこと言うな!! そして静月はクスリと意地悪そうに笑ってその場を後にした。

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